米国流の現場指揮システム <br>インシデント・コマンド・システム

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米国流の現場指揮システム
インシデント・コマンド・システム

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コスト最小化を目的に効率化されたICSの5つの機能

ICSの基本的な機能は、次の5つに分かれている。

指揮本部

インシデント・コマンダーとして現場活動の総責任を負う。指揮本部のスタッフには安全監督者、通信責任者、広報責任者がいる。

運営部門

インシデント・コマンダーの直属で、災害に対応するすべての任務を管理する。運営部門の指揮者は、インシデント・コマンダーが設定した目標や計画に合わせて実動部隊に作業を指示する。

リソース調達部門

後方支援を担う部門として、現場を支援するために必要な設備、サービス、資機材を準備する。

計画・情報収集部門

現場活動の進展に関する情報を収集し、各部門へ伝達する。さらに、現場に割り当てたリソースを把握する責任もある。指揮本部は計画・情報収集部門の収集した情報を利用して活動計画を作成する。

経理・管理部門

要したすべての経費の記録と文書化を行うほか、金銭面の管理を担う。

■ICSの5つの機能

■ICSの5つの機能

このように各部門で分業を図り、しっかりとした指揮命令系統を構築してコミュニケーションをとることで、災害に対する準備や迅速な対応、そして対応後のリカバリーまで、部隊を効率的に動かす指揮命令系統がICSだ。

米国における消防ではICSを基に指揮隊運用がなされており、機能・組織を単位化することにより、実際に発生した災害の規模に合わせ、必要なリソースのみを選択して現場に投入している。ICSは理論上、あらゆる種類の、そしてあらゆる規模のインシデントに対し、必要最小限のコストで効率的に対応できる指揮命令系統なのだ。

ICSに求められる要件とは?
  • どのような災害にも対応できること
  • 災害規模の大小を問わず柔軟に対応できること
  • 即時に対応できること
  • 異なる地域間や他機関との連携でも機能するよう標準化されていること
  • コストの効率化を考慮すること
ICS(インシデント・コマンド・システム)は、米国の現場指揮システムだというのが、多くの方の認識ではないだろうか? 確かに、考案して最初に導入したのは米国だが、採用しているのは米国だけではない。JICA主催の海外研修生の訓練指導が日本で行われており、そこで発展途上国をはじめ様々な国の人達と話すと、数多くの国がICSを採用していることがわかり、少し驚いた覚えがある。 まだまだ日本では馴染みが薄いが、世界的に普及しつつあるICSについて紹介する。
文◎草場秀幸(在日米海軍統合消防局 佐世保署勤務) Jレスキュー2019年3月号掲載記事

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