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消防署紹介
宮古地区広域行政組合 山田消防署(岩手県)
東日本大震災から7年 公共防災エリアで活動開始
平成30年3月10日。東日本大震災の津波で被災した岩手県山田町山田消防署の落成式が行われた。移転新築先は、町の中心部高台に造成された約2.7ヘクタールの公共防災エリアで、医療施設や警察(交番)も配置され、山田中学校、町民グラウンドなどが隣接する。
震災時、海岸線から約300メートルの位置にあった旧山田消防署は、津波で建物1階が水没。津波は車庫の天井まで達し、車両や資機材、防火衣も流された。山田消防署の職員は、完全に使用不能となった1階から資機材や防火衣を階段の踊場や2階に移し、消防や救援救護、がれき撤去、遺体の捜索などの活動機能を維持していた。その後、2階トイレを浴室に改修するなどの応急復旧工事を行い、通常の消防活動を行っていた。
震災から7年。新庁舎の立つ公共防災エリアは、新しく開通した町道や国道、三陸沿岸道路(山田宮古道路)にも面していることからアクセスが格段にスムーズになり、現場までの経路も複数確保できるようになった。
ピロティ式車庫の導入でスピーディな対応が可能に
広大な面積を保有する岩手県。なかでも山田消防署が所属する宮古地区広域行政組合消防本部(1本部3署4分署)の管轄面積は2670.51平方キロメートルにも及ぶ。そのうち同署が管轄するのは263平方キロメートル。現在、27名の職員が業務にあたっている(いずれも平成30年4月現在)。
管轄地域における活動の一番のネックが、移動に要する時間だった。リアス式海岸沿いの道路は急カーブが多く高低差も大きい。山田消防署から、第二次救急医療施設の県立宮古病院や県立釜石病院への救急搬送にかかる時間はいずれも片道30~40分ほど。往復ではゆうに2時間を必要とする。
出動時間、移動時間を少しでも短縮し迅速化するため、新庁舎では車両が機能的に格納できるピロティ式の車庫を採用、消防車や救急車がどの位置からでもスピーディに出動できる設計とした。
また、駐車場のスペースを大きくとることで、事案の規模に応じてフレキシブルかつ安全に出動態勢を調整できる環境を整えている。
陸路・空路を駆使したレスキュー活動を展開
広い訓練場はポンプ操法をはじめ各種訓練の場としても活用される。さらにここを防災ヘリやドクターヘリの緊急離着陸場として対応できるスペースとする目的もあった。新庁舎ができる以前、ヘリの離発着場は近所の小中学校の校庭や公共グラウンドなどで、そのため着陸時にはダウンウォッシュで土埃が舞い上がらないよう、消防職員がポンプ車によって散水しなければならなかったからだ。
新庁舎では、限られた人員のなかで防災対応離着陸場の安全管理が運用できる。以降同署は、救急活動のほか、災害防ぎょ活動、救助活動、災害予防活動など、空からの消防防災活動にも力を注いでいる。
平成29年、119番通報の受付を集中化する通信指令センターも消防本部に整備された。山田消防署の車庫には、導入したばかりの小型動力ポンプ付水槽車も待機している。さまざまな苦難を経験した山田消防署だからこそできる活動がある。同署には不便な立地を地の利に変えて、陸空から攻める公共防災エリアの拠点としての活動が期待されている。
山田町大沢地区にあった旧山田消防署庁舎は、東日本大震災の津波で約4m浸水し、車両2台や資機材が流出した。車庫を含む建物1階は完全に使用不能となり、応急的に復旧工事を行い、業務にあたってきた。写真は平成23年3月14日の旧消防庁舎。(写真提供/山田消防署)
キャップも一新!!
宮古地区広域行政組合消防本部では、平成27年に救急隊のキャップをリニューアルした。使命感と本部の誇りを込めたこだわりのデザインは、職員が手掛けたもの。