焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」

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焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」

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飛行訓練を積み重ねて技術を磨く

隊員全員が操縦資格を取得

焼津市では2019年(令和元年)、消防団としては静岡県内初となるドローン隊を隊員8名で発足させ、令和2年の出初式でお披露目とした。「空」と「放水」を組み合わせたチーム名「SKY SHOOTスカイシュート」は、この出初式で披露した一斉放水にちなんでいる。令和2年にはさらに隊員8名が加わり、現在は総勢16名で活動している。

ドローンの操縦資格を得るには、国土交通省が定める「無人飛行機の飛行に関する許可・承認の審査要領」に示されている「10時間以上の飛行経歴」が必要となる。そこで焼津市では操縦者の育成を目的に2018年(平成30年)、全国の自治体として初めて、国土交通省が認定する「無人航空機等の操縦者に対する技能認証を実施する講習団体」として登録されている。これらのサポート体制が奏功し、SKY SHOOTでは16名全員が操縦資格を取得済みだ。

ドローン隊員は山間部や沿岸部を含む市内各地において飛行訓練を行い、操縦技術を磨くとともに、ドローンの有効性や能力の検証を行っている。また令和2年度には、土砂災害想定訓練、水産加工団地や防風林での火災想定訓練など、志太消防本部や焼津市防災部などの他機関と連携した訓練も実施している。

またスカイシュートでは隊で運用する機体以外にも、各隊員がDJI社製Mavic Mini2を所有しており、大規模災害発災時に防災センターへの参集が困難な状況にあっても、市内各地の被災状況を空撮して一元的に情報を集められる体制を整えている。

一方、焼津市にはドローン隊として、SKY SHOOT以外に、焼津市防災航空隊「BLUE SEAGULLS(ブルーシーガルズ)」がある。隊員は焼津市防災部の職員を中心にさまざまな部局から選抜され、焼津市防災部と志太消防本部が入る「焼津市消防防災センター」を拠点に活動している。

焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」
SKY SHOOTが初披露された令和2年の出初式。この一斉放水がチーム名の基となった。
焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」
焼津市から焼津市消防団へ2月28日、ドローン仕様車が引き渡され、運用が開始された。さっそく同日、引き渡し式に続き、SKY SHOOTが飛行展示を披露した。
焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」
3月6日に実施された水難救助救出訓練には、活動服にヘルメット姿の中野弘道焼津市長も参加した。
焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」
SKY SHOOTの立ち上げメンバー。
焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」
令和2年6月には「消防団員としてスキルアップしたい」と4名の女性消防団員が飛行訓練を開始。同年12月までに4名全員が検定試験に合格し、全国初の「女性消防団員ドローンパイロット」が誕生した。
焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」
機体操縦と撮影及び飛行支援の2名体制でドローンを運用するBLUE SEAGULLS。山中(左)はマスターとしてプロポで目視による操縦を行い、望月(右)はスレーブとして別のプロポでカメラワークと、機体情報の監視などを行う。(写真/焼津市提供)
焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」
BLUE SEAGULLSのロゴがよく目立つベスト。
「SKY SHOOT」10名が参加した土砂災害ブラインド型訓練

SKY SHOOTが令和2年6月7日に実施した土砂災害ブラインド型訓練を紹介する。

「連日の記録的な豪雨により、市内小浜地区で土砂災害が発生」との想定に基づき隊員10名が出動。2チームに分かれ、ドローン1機が土砂災害現場の全体を空撮して状況を把握、さらにもう1機が行方不明者の検索を実施した。この際、ドローン2機の衝突を避けるために高度はそれぞれ40m、50mに設定。行方不明者を救出、訓練を完了した。

焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」
ドローンを操縦する「SKY SHOOT」。今回の訓練では2機のドローンを同時に運用した。
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訓練場所となった市内の採石場。〇印が要救助者のマーク。
焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」
ドローンが重点的に検索した要救助者を消防団員が救出する。
焼津市消防団は18個分団500名

平成20年11月1日、焼津市と大井川町の合併により消防団も1つに統合され、新たな焼津市消防団が誕生した。本部および18個分団のほか、女性消防隊、ラッパ隊、ドローン隊、機能別消防隊(OB、事業所、市役所)を発足し、団員数500名(うち女性17名)で活動している。

焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」
消防団活動の拠点となる焼津市消防防災センター。焼津市の防災部と志太消防本部/焼津消防署が同一庁舎内に配置されている。
焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」
建築物の構造や製品・技術の発展など、社会環境の進化とともに火災の燃焼挙動も年々多様化していることから焼津市消防団では令和2年、全団員を対象とした火災戦術講習を実施。正しい知識を共通認識することによる的確な行動や、常備消防と連携した戦術の習得など、団員の技術向上を図った。
焼津市消防団のドローン隊「SKY SHOOT」
焼津市消防団では、建物火災における取り回し等に効率的な40mmホースと、消防団では全国初となるガンタイプノズルを令和2年度、全分団に配備した。
望月海渡

望月海渡焼津市 防災部 地域防災課 防災対策担当 主事 (防災士・ドローンパイロット)

地域防災の任にあたるほかBLUE SEAGULLSのドローンパイロットとしても活躍する。(所属と肩書は取材当時のもの)

山中和人

山中和人焼津市 防災部 地域防災課 防災対策担当 主査 (防災士・ドローンパイロット)

ドローン仕様車両の導入を主導した山中和人は、消防団事務局担当として志太消防本部から出向中。焼津市防災航空隊BLUE SEAGULLSの隊員も兼務する。(所属と肩書は取材当時のもの)

静岡県の焼津市では2021年(令和3年)2月28日、市消防団にドローン仕様車両を配備した。焼津市消防団は令和元年発足のドローン隊「SKY SHOOT(スカイシュート)」を擁しており、このドローン仕様車両はドローン本体と飛行に必要な資機材を運搬するほか、緊急時には屋根のヘリポートから離着陸ができる仕様など、ドローン運用の際の拠点となる。全国初の試みであるドローン仕様の消防団指揮車、その特徴を紹介する。
文◎焼津市消防団事務局 写真◎伊藤久巳(特記を除く) Jレスキュー2021年5月号掲載記事

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