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CBRNE新活動マニュアル「浦安メソッド」公開!【前編】
適正かつ合理的な防護装備
化学防護服については、現場活動を徹底した時間管理のもとで柔軟に行い、活動の質を高めるためにはどうすればよいかという観点から、HZ活動を検証し、合理的かつ総合的な判断により変更した。
具体的な変更ポイントは、以下の①~⑥となる。
①CBRNEテロが疑われるケース=脱陽圧、とする。
その理由は、浦安市消防本部は救助隊が1隊6名のみで、交代要員が不在であり、約20分で自給式呼吸器のボンベを交換しながら要救助者多数の現場に対応するのは困難であること。またテロ災害の近年の傾向として、消防・警察の現着後のタイミングで再び爆破される2次攻撃、さらにドローンによるダウンウォッシュにより散布された剤が拡散され、被害が広がる等のイレギュラーな事態も視野に入れておく必要がある。救助隊の交代要員不在の中、体力消耗が激しく短時間の活動を余儀なくされる陽圧化学防護服は、浦安市の初動対応においては適さない。隊員の安全を担保した上で、隊員負担を軽減し、どれだけ長時間の活動を実現するか。そこに焦点を絞り尽力することが、結果的に1人でも多くの人命救助に繋がると考える。
②新レベルA化学防護服の採用
これまでレベルA装備として位置づけられていたのは自給式呼吸器内装形気密服(タイプ1a)、通称、陽圧式化学防護服のみだったが、自給式呼吸器外装形気密服(タイプ1b)もレベルA装備として採用し、ホットゾーンにおける活動の質を高める。
さらに面体を着装したまま活動を続けられるよう、ボンベ交換はレギュレータで行うこととし、脱着が簡単な構造の面体を選定。吸収缶用アダプタを用いて防毒マスクへの変更も可能に。仕様は「面体外側着装」の外国製5点締め&フチ長タイプを採用(写真参照)。
レベルAの新防護服(気密服)+防毒マスクまたは空気呼吸器
救助隊が選定する防護服で、陽圧防護服と同じ素材の非陽圧服。屋外は初動対応から防毒マスクを選定可能とし、屋内で高濃度の剤が充満する狭所空間など安全第一の現場は空気呼吸器を選定し、状況により防毒マスクへ切替える。また使用する際は、「呼吸抵抗過多、酸欠、剤噴出、生存者不在区画」など緊急時の隊員の退避基準を設けて柔軟に対応することとした。
マルチ吸収缶︎
面体着装(2名1組)の方法
1:防護服フードをしっかり被り上部に空間がない状態にする
2:フェイスカフがこめかみの位置にくるまで後方に引っ張る(重要)
3:フード後方をしっかりと折り込む(重要)
4:面体シール部がフェイスカフに密着するように面体の位置を合わせる(特に額と顎)
5:3と4を保持し、額部が浮きやすいため押さえ、ヘッドストラップを後方+下方へ引き、頭頂部の緩みをなくす(重要)※面体4点締めのシゲマツ製防毒マスクは必須
6:3と4と5を保持し、ヘッドハーネスを引き、面体を密着させる
7:面体部分の気密確認(超重要) 気密がとれない場合は再調整、またはケミテープによる目張りにて対応する
※ 目張りは初動対応が遅れる要因となるため、定期的に効果確認(訓練)を課して対応する。
③新レベルB・C化学防護服の採用
レベルB、Cはスプレー防護用密閉服(タイプ4)の中から、国内在庫保有品であり、防護性能がレベルAと近似値を示し、かつ透過性の高い化学剤ルイサイトの防護性も検証されている製品の中から選定。
新レベルC化学防護服(密閉服)
消防隊・進入救命士が屋内外問わず選定する防護装備。救助隊が屋外の初動対応で選定する防護装備。
④新防護服はすべて目張り不要の全身一体型
陽圧式の数少ないメリットは、剤の防護性能、着装時間の早さ、除染が容易であること。新防護服に変更することによって、この長所を損なわない要件として、新防護服はすべて目張り不要タイプとした。
⑤防毒マスクの適応範囲拡大
防毒マスクに取り付ける吸収缶はマルチ吸収缶とヨウ素対応型の2種類がある。ヨウ素防護機能は、原発事故対応の時に重要になるが、浦安市は原発事故対応の任務がなく、仮にダーティボムが発生してもヨウ素の発生はないとの意見を専門家から得られたため、マルチ吸収缶一択とした。
⑥Eテロ災害時
爆弾テロ対応時の基本型は、防火衣+インナー用化学防護手袋+ケブラー(手袋)とする。加えて爆弾やダーティボムは爆風損傷として、破片等を原因とした鋭的損傷による気管支障害、浮遊物による眼の障害が懸念されるため、防毒マスクまたは空気呼吸器を選定し隊員を受傷から守る。
なお、検知によってCやNRおよびBの剤がないことを確認する「打ち消し」活動後は、ゴーグル+N95マスクまたは全面形粉塵マスクへの変更を可能とする。