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築地市場火災 ―火災に勝つ消火戦術―
(3)今回の築地火災を分析
今回の火災現場を地図に落とし込んでみる。すると新大橋通りは40メートル道路なので延焼の恐れはない。裏側は4メートル道路で木造建築物が面しており、ここに延焼すると厄介だ。正面左は角地で右は耐火で延焼阻止になる。ただ問題は大隊長の話にもあったが、歩道前面がアーケードで雁木造りのようなひさしがおおっているこの場所特有の構造と、この時間は閉店後で全面がシャッターで閉じられ進入が困難であること。糸魚川の火点の建物と同じで、建物内部は1階から3階まで区画がなく、屋根は共用のトタン張りで天井に伸びた炎は正面から見て右奥へ早い段階で延焼したのだろう。観光客が多く、裏側の店舗の前は歩行も困難な状況であった。
屈折放水塔車からの放水が有効的であり、この大量放水は飛び火防止にも役立っただろう。しかし本当に奥ブロックへの延焼をとどめたのは、裏側の墓地から進入し、屋根から屋内へ注水した活動だろう。目立たないが勇気ある活動だ。この墓地は通りからは間口が狭く、ここに墓地があることはなかなかわからないが、隊員たちはこの空間を当然熟知していたからできた活動なのだ。
京橋消防署と言えば銀座を管轄とする東京でも都会中の都会だ。延焼火災はあまり多くなく、耐火建物の火災やCBRNE災害、多数救急事案、予防対策などの業務に追われていると思う。その中での消防活動困難地域での火災に対し、計画に基づき素晴らしい防ぎょをしてくれた。
また全国にある市場も築地市場と同様の危険性があるので、各消防本部でしっかりとした消防活動困難区域として消防計画を立てておくことが必要だし、市場関係者との十分な連携や防災訓練、さらにはきめ細やかな消防査察も必要だろう。
【お話】
原田千春
東京消防庁
京橋消防署
築地出張所 所長
消防司令
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