震災対応に強くなる重機訓練法 ―取手市消防本部―【後編】

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震災対応に強くなる重機訓練法 ―取手市消防本部―【後編】

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震災対応に強くなる重機訓練法 取手市消防本部
DRT JAPAN世話人 日本財団 災害担当 黒澤司さん(写真左)

「被災地には、業者・消防・自衛隊そして我々NPOなど、それぞれの任務や目的に沿って重機を操作している。重機のサイズも異なり、その意味でも得意不得意を補う連携は重要かと思う。今回の訓練のように斜面を登り下りする操作は災害現場では特に重要で、走行操作を巧みに行えないと災害現場では苦い思いをすると思う。消防重機隊員からは重機があっても走行訓練をする場所がないため現場に出た時のことを考えると不安になるとの声もきかれる。取手消防のように走行訓練ができる設備があることに驚いた。この施設を他の消防重機隊でも活用できたら消防重機隊全体のレベルアップにつながると思う」

DEF TOKYO 代表 鈴木暢さん(写真右)

「災害現場では、倒木をグラップでつかんでチェーンソーで切断するという活動が結構あるので、取手市の重機隊のように重機搬送車にチェーンソーが積載されていると役立つ。我々の場合は、災害現場では何かと役に立つ「単管」は必ずセットで携行しているが、消防の場合もそれに代わる資機材や、重機に欠かせないスリング等があると便利で、取手市消防本部の場合はそうした必要な資機材がすべて重機とセットで積載されているので、現場での活動性は確実に上がると思う」

震災対応に強くなる重機訓練法 取手市消防本部
2020年(令和2年)11月開催の合同訓練に参加した消防本部の方々。
消防司令長 吉田大祐

消防司令長 吉田大祐取手市消防本部 取手消防署 副署長 災害重機機動隊隊長

「重機は運用する本部の多くが消防庁の貸与車両であり、事によっては申請しなくてはいけないなど、または他の本部局では規則の縛りが多く、重機はあるが訓練はできていないという組織もある。

一方で、自分たちなりに考えて自主勉強会で積極的に訓練を行っている職員もいる。彼らは現場を見据えているのだ。たとえ、取手市のような訓練施設がない本部であっても、地元の土建屋さんに声をかけ、土建屋さんの施設で訓練をさせてもらい、技術アドバイスを受けるなど工夫はできるはず。

今回のような重機操縦に特化した合同訓練は、以前からやりたいと思ってきたこと。これを機に、今後も定期的に行っていきたい。

重機は空間操作、想像力が大事。そして、重機を触った時間数だけ技術は身に着くので、どんどん操作し身体で覚えることが大切。何よりも見て習う、見習いの精神から技を盗むことが大切だ」

*重機操縦は繊細な動きになるので、消防の皮手袋だと引っ掛かりがありうまく動かすことができない。白手でも軍手の薄いものがあるのでそれが使いやすい。

第二中隊特別救助隊隊長  武藤久士

第二中隊特別救助隊隊長 武藤久士取手消防署

「災害重機機動隊を創り上げた吉田副署長はとにかく現場活動に対する情熱があり、暑い時も寒い時も自分から動くので、そこに食らいついていこうと皆が動いている、とても人望のある方。だから多数の組織が参加しての意見交換会が実現した。隊長としては、隊員の受傷事故を防ぎ、安全迅速に活動するように、訓練以外の時間も、車両の移動の際にも隊員の誰がどこに立っているかなど目を光らせている。隊員との良好なコミュニケーションが安全な活動につながるため、事務的な申し送りはもちろんのことだが、それ以外の心の部分をキャッチしたいので、早めに出勤して廊下、駐車場、トイレなどですれ違うところなどあらゆるところで自分からコミュニケーションを取っていくようにしている」

第一中隊特別救助隊隊長 秋田浩平

第一中隊特別救助隊隊長 秋田浩平取手消防署

「重機の操作は正直言って難しいが、先輩の技術を盗み見て自分のものにしてきた。重機も救助ツールのひとつであり、使いこなせなければ意味がない。高価な重機が宝の持ち腐れになってしまわないよう、徹底的に訓練した。隊長として気をつけていることは、優しさだけではなく、全員が同じ方向を向いて、同じ志で進んでいけるように手綱を締めること。知識や技術は各々の努力で身に着けられるが、志を同じ方向に向かせるのは難しい。消防は家族よりも一緒にいる時間が長く、小隊となれば常に行動を共にする事となる。性格や考え方は人それぞれであり、タイプの違う隊員同士が一緒の隊になることもある。それぞれの性格、長所と短所を把握しておくことで、現場活動に活きてくると思う。コミュニケーションを多くとり、隊の雰囲気をよくできるよう気を配っている。志をひとつに、当たり前のことを当たり前にできるように」

【前編】の記事はコチラ
写真◎伊藤久巳、取手市消防本部 Jレスキュー2021年5月号掲載記事 (役職・階級・体制は取材当時のもの)

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