管内は人種のるつぼ!<br>東京消防庁 新宿消防署の「多言語対応」

Special

管内は人種のるつぼ!
東京消防庁 新宿消防署の「多言語対応」

新宿消防署配属の職員が避けて通れないのが、外国人対応である。とくに救急隊にとって外国人対応は避けられず、各隊長が口をそろえてその難しさを訴える。

写真◎伊藤久巳(特記を除く)
Jレスキュー2019年7月号掲載記事

Twitter Facebook LINE
全7隊が英語対応救急隊
複数言語のチラシ制作も

東京の中心地である新宿は、外国人観光客に人気のスポットである。西新宿にある都庁は東京都の代表的な観光地の一つで、その周辺には大規模で国際的なホテルが多数点在するため、新宿を拠点に観光する外国人観光客も多い。また、コリアンタウンとして有名な大久保エリアは、いまや韓国関連に限らず、ベトナム料理、ネパール料理店などが数多く出店し、多国籍な街に生まれ変わっている。日本語学校も多く、同エリアでは外国人観光客よりも外国人居住者が多いほどだ。参考までに新宿区の在留外国人数を調べると、令和元年5月1日現在で4万3564人(新宿区住民基本台帳より)。その出身国籍はアジアをはじめ中東、アフリカ、オセアニア、欧州、中南米まで129国籍にわたり、新宿区はまさに人種のるつぼとなっているのである。このため新宿消防署の救急隊は本署2隊、西新宿出張所2隊、大久保、戸塚、落合の3出張所各1隊の計7隊すべてに英語で対応できる「英語対応救急隊」を配置している。

また、たとえば2018年の札幌市爆発火災を受けて、スプレー缶火災に注意を促す広報チラシを作成する場合には、日本語だけでなく、ハングル文字によるポスターも作成。同時に、救急時の119番案内と病院案内の番号を3ヵ国語で表記した案内板を作成し、各ホテルに置いてもらうなどの取り組みを実施している。さらに、職員向けの新宿消防署独自の取り組みとして、幹部が集まる毎朝の朝会(活動報告会)では、前日の出場報告をすべて英語でも行うことで、幹部層が英語に触れる機会を設けている。

人種のるつぼ「新宿」を管轄する新宿消防署では、活動隊だけでなく、広報活動や自衛消防訓練などを担当する予防課の職員にも国際都市を担当する消防署としての対応が求められている。

東京消防庁 新宿消防署の「多言語対応」
毎朝の朝会では前日の出場報告が英語でも行われる。
(写真/官野貴)
東京消防庁 新宿消防署の「多言語対応」
外国人観光客向けに作成した、119番通報のガイダンスや病院案内ガイド。消防職員のアイデアで作成されたもの。
東京消防庁 新宿消防署の「多言語対応」
スプレー缶の処分の方法と火災の危険性を喚起するチラシ。英語が得意な職員が英語部分を作成。ネイティブスピーカーのチェックも入っている。
東京消防庁 新宿消防署の「多言語対応」
救急車には英・中・韓の3ヵ国語に対応した「救急ゆびさシート」も備えている。

次のページ:
英語通訳担当に訊く「消防と英語」

Ranking ランキング