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消防車両の日常点検のポイント
はしご車のメンテナンス
消防車両の使い方は独特のため、一般車両とは異なり、消耗する部品、故障が起こりやすい箇所に特徴が見られる。そこで、機関員のために消防車両の点検ポイント、メンテナンス方法を東京消防庁装備工場のプロがアドバイス。
写真◎伊藤久巳
Jレスキュー2018年3月号掲載記事
操縦の仕方と各部のグリス給脂、塗布が大事
一般の大型トラックと異なるのが、狭隘路(狭い道)を走行することによる操舵装置に関する不具合だ。長距離を走行するトラックに比べるとハンドルを切る頻度が極端に多く、また、操舵角(ハンドルの切れ角)を多く取る必要があるため、操舵装置に大きな負担がかかる。また、昨今の自動車はハンドルの操舵力をアシストするパワーステアリング装置が搭載されているため、停車したままでも簡単にハンドルを切ることができてしまう。しかし、あくまで操舵力をアシストしているだけで、ホイールに切れ角をもたらすドラックリンクやタイロッドなどの操舵装置には大きな負荷がかかってしまう。そこで、負荷を減らす方法として、停車状態では極力ハンドルを切らず、超低速でも構わないので車両を走行させてからハンドルを切ることを推奨する。これによって負荷が軽減され故障するリスクが減少する。
一方、はしご装置には摺動する部分が多く、そこにはグリスが塗布されている。たとえば梯体をスライドさせるのに連同士が直接摺動することを防ぐためにスライドパッドが設けられており、そこにグリスを給脂する必要がある。正しくグリスが給脂されていないと梯体伸縮時のジャダ(振動)の発生にも繋がりかねない。また、梯体を支える傾斜矯正装置や車体固定装置にもグリスを給脂する箇所が多数あり、グリス切れによって発生する摺動部分の異音や金属同士が擦れることによって起こる早期摩耗を防ぐことができる。
私達整備士は、1台の車両に対して常にメンテナンスを施せるわけではないので、扱われる方々が修理書などに記述されているメンテナンスの時期や方法を確認し、日常的にメンテナンスを行ってもらうことで万全な状態を保っていただきたい。






吉澤治樹
一級自動車整備士/特殊車両の整備担当(取材当時)