東京消防庁9HR 林野火災対応は頭脳戦だ!【後編】

Special

東京消防庁9HR 林野火災対応は頭脳戦だ!【後編】

【中編】の記事はコチラ

写真・文◎木下慎次(特記を除く)
Jレスキュー2025年3月号掲載記事
(部隊の編成や隊員の役職・階級は取材当時のもの)

※本訓練は山中での活動を中心とした内容であるためスーパーポンパーによる水利部署や送水といった項目は割愛し、現場直近の防火水槽(100立方メートル)に9HRの普通ポンプ車(大量放水仕様)が部署して送水を実施しているとの想定(仮想)で実施されている。

Twitter Facebook LINE

林野火災の特徴は、活動が長時間に及ぶこと、そして最大の武器である水、つまり水利がそばにないこと。活動のポイントは、いかに火点直近まで送水できるか、となる。そのために可搬ポンプの効果的な使い方、遠距離送水の技術など、あらゆる面で計算が求められ、計算された中での戦略的な活動が必要になる。

東京消防庁9HR 林野火災対応
実災害では、現場を管轄する消防署隊が最先着している場合が多く、9HRは指揮本部長からの下命で動くことになる。現着すると部隊長や各隊長は指揮本部へ向かい、現在の状況と任務を把握し、各隊に周知する。実際の活動に際しては9HRの隊員らが分散して署隊をサポートするといった方法ではなく、9HRとして一つの局面を任されることが多い。
東京消防庁9HR 林野火災対応
林野コンテナや各車両から必要資器材を下ろし、入山口付近に一旦集結させる。資器材は林野火災対応に直接使用する消火系資器材等だけでなく、救助車から救助ロープ、小綱、カラビナなども適宜用意する。準備を終えたら隊員らが集結し、資器材携行の任務分担を実施。携行に際してはできるだけ背負子を活用して両手が使えるようにする。 
東京消防庁9HR 林野火災対応
隊員らが分担して資器材を携行する。
東京消防庁9HR 林野火災対応
20名体制での出場時における搬送資器材内容
東京消防庁9HR 林野火災対応
分担された資器材を携行し、入山を開始する。当然、この段階からホース延長がスタートする。背負子に収められたホースを入山口付近に設定した可搬ポンプなどに結合してから前進をはじめる。
東京消防庁9HR 林野火災対応
前進しながらホースを延長している状況。背後から補助者がホースの繰り出しをサポートする。
東京消防庁9HR 林野火災対応
約40kgある可搬ポンプ。4人で呼吸を合わせて搬送を行う。
東京消防庁9HR 林野火災対応
林野火災現場における隊員の安全管理
東京消防庁9HR 林野火災対応
完成した簡易水槽(1t)へ充水させている状況。
東京消防庁9HR 林野火災対応
東京消防庁9HR 林野火災対応
活動場所となる火点付近に到着したならば活動準備をはじめる。簡易水槽(1t)を展開し、延長してきた65mmホースで送水を受け水槽に充水させる。そしてC級ポンプに吸管を結合し、簡易水槽に投入する。
東京消防庁9HR 林野火災対応
分流器により背負い式放水器具へ充水を行っている状況。 
東京消防庁9HR 林野火災対応
C級ポンプから65mmホースを1線延長し、筒先側付近には背負い式放水器具への充水拠点となる分流器を設定する。分流器以降は山頂に向けて2本のホースを延長し、筒先を設定する。これは背圧による背負い式放水器具への充水を可能にするという意味だけでなく、地形や延焼速度などにより、一度延長すると変更が困難であるという特性を踏まえて余裕を持っておくという意味がある。
東京消防庁9HR 林野火災対応
林野火災対応における筒先配備ポイントは斜面上となる場合も多い。そこで、斜面上を安全に移動する手がかりとして、フィックス線を設定しておくとよい。

次のページ:
いよいよ消火活動を実施

Ranking ランキング