雪道を走るテクニック ~安全走行のポイント~

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雪道を走るテクニック ~安全走行のポイント~

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3.スタックからの脱出方法

積雪や凍結で機関員がもっとも恐れているのが、スタックである。基本的にはチェーンを着装していれば深雪や急坂でない限りスタックする可能性はほとんどないが、万が一消防車がスタックした場合、深雪によるもの、凍結によるもの、の大きく2つの理由が考えられる。

深雪によりスタックするのは、新雪路では数十センチメートルまたはそれ以上の積雪となっていることが考えられる。トラックベースの消防車両であればチェーン着装状態でタイヤの半分程度までの積雪なら何とか走行可能だが、走行後に車両底面の痕跡が残る状態の積雪であればスタックする可能性がある。救急車などは四輪駆動であっても車両の最低地上高が低いので十分な注意が必要である。このほか、除雪の雪塊や吹き溜まりがあると車両底面に雪が入り込む場合がある。

スタックからの基本の脱出方法は、車両底面に雪が入り込んだ場合にはスコップで除雪を行い、場合によっては車両の駆動輪(四輪駆動の場合には主駆動輪)の走行方向に毛布や廃チェーンなどを入れた麻袋を広げ、ゆっくりと発進する。

凍結路で路面の凹凸によってスタックした場合には、若干後進してから再発進したり、路面に乾燥砂や凍結防止剤を散布する方法がある。また、路面の氷の凹凸が部分的に激しい場合にはつるはし、手斧、金梃などで凸部分を均した後に乾燥砂を散布すると脱出しやすい。なお、勾配が急な凍結路は事故になる可能性が高いため、無理をせず別のルートを検討すべきである。

4.帰署後にやっておくべきこと

現場や出向先から帰署したら、まず車両の雪を除去する作業を行おう。ボディ全体、さらに前照灯や赤色警光灯などの灯火類、タイヤやフェンダー周りに付着した雪を除去した後は、凍結防止剤を除去するために温水式高圧洗浄機で車両洗浄を行う。さらに、シャッター部やヒンジ部などの凍結を防ぐためにクーラントを適宜噴霧しておく。また、チェーン等の着装状況も合わせて確認しておく必要がある。

帰署後には車体の除雪等のほか、タイヤ周りの雪塊を落とした後に凍結防止剤等を除去するために温水高圧洗浄を行う。
帰署後には車体の除雪等のほか、タイヤ周りの雪塊を落とした後に凍結防止剤等を除去するために温水高圧洗浄を行う。
放水口周りやボックス周りに水分があると凍結してしまう恐れがあるので、可動部にクーラントを吹きつけておく。
放水口周りやボックス周りに水分があると凍結してしまう恐れがあるので、可動部にクーラントを吹きつけておく。

5.チェーンを装着する

横手市消防本部のような雪国消防では、積雪時には基本的にチェーン着装状態で待機し、好天が続けば道路状態が良好となるので点検時や出向時に外す対応をとっている。

チェーンの着装輪は基本的には駆動輪である。四輪駆動車の場合にはベースとなる二輪駆動シャーシの駆動輪とする。

チェーンを着装するタイミングは、降雪の状況を見て道路上に積雪が確認されたときだ。夜間や早朝は冷え込んで降雪が強くなるため、状況を見ながら夕方の車両点検時や遅くとも21時頃までには着装するようにしている。なお、高速道路上に出場するときには梯団除雪などによりしっかり除雪されていることから、基本的には出場時にチェーンを外す対応をとっている。

チェーン着装時は速度にも注意したい。そのチェーンの許容最高速度以上で走ると破損の原因になるからだ。許容最高速度は一般的なチェーンで時速30km、ワイヤ・スプリングチェーンで時速50km程度だが、それぞれの取扱説明書等を確認してほしい。

なお、危険回避のためにやむを得ず急制動をかけるとチェーンが破断する場合があるので、その後異音などを感じたら一旦停止して確認すべきである。

チェーンの巻き方

チェーンの着装は慣れてくると2分程度で行えるようになる。

1/チェーンにねじれがないように広げ、チェーンの裏表を確認する。この際にクロスフックのエッジ部側はタイヤ外側になるように準備する。これは、エッジ部がタイヤ側になるとエッジでタイヤを傷つける場合があるためである。敷板はダブルタイヤの内側の前に設置する。
1/チェーンにねじれがないように広げ、チェーンの裏表を確認する。この際にクロスフックのエッジ部側はタイヤ外側になるように準備する。これは、エッジ部がタイヤ側になるとエッジでタイヤを傷つける場合があるためである。敷板はダブルタイヤの内側の前に設置する。
2/車を動かして、注意しながらタイヤを敷板の上に乗り上げる。その後、必ずサイドブレーキを引きエンジン停止後に輪止めをかける。
2/車を動かして、注意しながらタイヤを敷板の上に乗り上げる。その後、必ずサイドブレーキを引きエンジン停止後に輪止めをかける。
3/ダブルタイヤの外側のタイヤ下部にチェーンを敷き、タイヤに回しかけるようにする。一人がチェーンを地面で押さえながらもう一人がタイヤにかぶせるようにすると作業が早い。この際に接続用のフック部分がタイヤの前方か後方に来るようにするとその後の作業がやりやすい。
3/ダブルタイヤの外側のタイヤ下部にチェーンを敷き、タイヤに回しかけるようにする。一人がチェーンを地面で押さえながらもう一人がタイヤにかぶせるようにすると作業が早い。この際に接続用のフック部分がタイヤの前方か後方に来るようにするとその後の作業がやりやすい。
4/チェーンの内側フックをかける。この際にタイヤの溝にクロスチェーンが引っ掛かりやすいので、全体が緩みなく均一にかかるように調整しながら行う。次に外側の板フックをサイドチェーン端部にかけエンドリンクに通してストッパをかける。
4/チェーンの内側フックをかける。この際にタイヤの溝にクロスチェーンが引っ掛かりやすいので、全体が緩みなく均一にかかるように調整しながら行う。次に外側の板フックをサイドチェーン端部にかけエンドリンクに通してストッパをかける。
この際にチェーンのたるみを引っ張りながら均一になるようにしてからフックをかける。
この際にチェーンのたるみを引っ張りながら均一になるようにしてからフックをかける。
5/チェーンバンドを取り付ける。この際にタイヤのナット締めつけと同様に対角側を順に取り付けて平均的に締まるようにする。
5/チェーンバンドを取り付ける。この際にタイヤのナット締めつけと同様に対角側を順に取り付けて平均的に締まるようにする。
6/最後にチェーンを引っ張るなどして全体の緩みやフック状態を確認し、少し走行してみて再度確認を行い完成。この際にもしサイドチェーンに余りがあるようであればあらかじめ切断しておくか針金等でとめる。
チェーン補修の必需品
チェーンプライヤ

チェーンは路面と接するクロスチェーン部が最も摩耗するので交換が可能。交換はまずチェーンプライヤでクロスチェーンとサイドチェーンを接続しているクロスフック部を切断し、新しいクロスチェーンのクロスフック部をカシメる。切断とカシメ作業にはチェーンプライヤと呼ばれる工具を使う。

チェーンプライヤ
チェーンのはずし方

チェーンバンドを取り外し、外側の板フック、内側フックを取り外し、端部を手前側にしておく。フックをタイヤで踏まないように、さらにタイヤ溝へのチェーン食い込みがあるとチェーンが巻きつく場合があるので、よく確認してから車両をゆっくりと発進させる。

チェーンのはずし方
チェーンのはずし方

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