Special
大量採用時代の新人教育法
酒田消防の「プリセプター制度」
先輩として失敗も伝えていきたい【提案者】消防士・池田健人
「私には、初めて出動した火災現場で、訓練ではできていた結索がうまく行えなかったという苦い経験がある。それは深夜の出動だった。闇夜に赤く燃え盛る火炎に恐怖を覚えてしまい、多数の隊員が入り乱れる火災現場で、自分が何をすればよいのかわからず気ばかりが焦っていた。2階へはしごを引き上げるため、垂れ下ったロープではしごを結着しようとしたが、暗闇の中、濡れた手袋にかじかんだ手が思うように動かない。早く! 早く! と焦るほどうまく結べず、目の前が真っ白になってしまった。訓練では完璧にできていた結索ができなかったことが、悔しくて悔しくて、自分の未熟さを忌々しく思った。なぜあの時の自分はできなかったのか? 訓練ではできていたことが火災現場に出たとたんにできなかったのはなぜか? 基本技術を応用する場面なのに、新人の私は考える余裕すらも持てなかった。
右も左もわからない新人時代、技術指導員がいたらどんなに心強かっただろうか。この教育制度を消防本部の伝統としていければ、私のように災害現場でうろたえたり悔しい思いをする後輩が減っていくのではないだろうか。
もし私が技術指導員を任命されたなら、私の失敗談や反省点も後輩の糧としてもらうため伝承しようと思う。それが次の世代のために我々ができる第一歩だと思うからだ」