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ロープレスキューの種をまく GRIMPDAY想定解説(その1)
世界大会GRIMPDAY2022の想定と解説 その1
文◎GRIMP JAPAN
Jレスキュー2023年1月号掲載記事
これまで海外大会に臨むために知っておくべきギアチェックについてお話ししてきました。これらを理解したうえで、いよいよ活動(競技)に入っていくわけですが、海外で開催されているロープレスキュー競技会は基本的に想定内容が事前に示されません。初めての場所で、その場で示された事故想定に対し、自分たちで選定した装備を使用し、活動の安全性や迅速性、安定性、指揮能力、要救助者に対するケアを競い合います。まさに実災害と同じなのです。
国際大会では、地上100mの吊り橋の上や建設工事中の足場の上、巨大クレーンなど様々な想定がありますが、今号からは2022年に行われたGRIMPDAY 2022で実施されたシナリオを紹介しながら、世界一となった「JAPAN WEST 9PM(以下、JW9PM)」がどのように活動し、その想定の活動ポイントはどこにあったのかについて解説していきます。
Day1 ワリビ・アミューズメントパーク(遊園地)第1想定:Loup Garou
想定
コースターの土台となる木製の支柱の内側のGL(グランド=地面)にいる要救助者をコースターのレール付近まで引き上げ、支柱の外側に出しGLまで下ろすという想定。要救助者へアクセスするルートも同様。
要救助者の位置には周囲にシートが張られており、スタート位置から要救助者の状態は確認できない。支柱の内側は担架を水平にするとぶつかってしまうほどの広さしかなく、上部から下部にかけて外に向かって広がっているため、直下に下ろすことができず、斜めに救出しなければならない。
活動解説
①活動前のブリーフィングでトラッキングラインによる救出を選択し活動を開始。事前に支柱の外側に準備されていた懸垂ロープを使用し、R2が先行して要救助者に接触するために上部に登る。レール付近まで登った後、支柱の内側に懸垂ロープを設定し、降下して要救助者に接触する。
②R1はコースター上部の支点にプーリーを設置するために、ロープをセットしたツインプーリーとトラッキングラインの端末を携行し、R2に続いて進入開始。リガーの2人は手分けしてアンカーの作成と担架の作成を行う。
③R1がコースター上部にプーリーを設置し、トラッキングラインの端末を結着したら担架を引き上げる。このときトラッキングを軽く張り、担架を支柱に接触させないように引き上げ、上部に到着したらトラッキングラインから担架を引き上げたラインを離脱させ、支柱の下にいる要救助者位置まで担架を下ろす。
④R2が要救助者に接触し、容態を観察したところR2のみで担架への収容が可能だったため、R1は上部で補助にまわり、R2が担架収容後アテンドにつく。支柱の内側は木製の枠に囲まれているため狭く、担架の角度を調整し水平から少し斜めにすることで土台への接触を避けた。
⑤リガーがTTRS(Two Tensioned Rope System)の3倍力を設定し支柱上部まで引き上げ、R1がトラッキングラインを取り付ける。ここからトラッキングラインを徐々に張り、支柱の内側から外側に担架を引き出す。担架のアテンドもこの時に内側のR2から外側のR1に切り替え、担架を支柱から外に出し、指定されたポイント(スタート地点)まで下ろし救出完了。活動時間は活動前のブリーフィングを含めて32分。
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ポイント 他