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フィンワークが上手くなる! 速くなる! 魔法のインソール
【大垣消防組合消防本部】
写真◎中井俊治、大垣消防組合消防本部
(Jレスキュー2018年7月号掲載記事)
インタビュー記事はこちら
発案者 水谷佑典 インタビュー
https://jrescue.net/interview/ogaki-mizutani/
フィンの能力を活かしきれてない
水難救助は水という特殊環境下で、要救助者を1秒でもより早く救出することが求められるため、様々な資器材を装備して活動するが、フィン技術を向上させることは水難救助隊員にとってとりわけ重要な課題である。しかしながら、フィン技術に関しては、科学的根拠に基づいた整合性のある参考書物がなく、活動隊は個人の経験と感覚によってフィンワークを行っているのが現状である。
ある参考書を考慮すると、効率よく推進力を得るフィンワークとは、「上半身を固定し、股関節からフィン先までを使って泳ぐこと。足首を固定して指先まで意識してフィンに力を伝え、足を蹴り下げる(以下「ダウンキック」)動きと、足を蹴り上げる(以下「アップキック」)動きを交互にリズムよく、フィンをしならせて行うことである」とされている。
しかし、効率よく推進力を得るフィンワークが身についていない隊員は、アップキックの動きがダウンキックに比べておろそかになりやすく、フィン先の使用やフィンのしなりといったフィンの性質・特徴を活かしきれない。そのため遠泳活動および流速環境下での活動に支障をきたし、要救助者の重みを感じやすく、要救助者の搬送を迅速に行うことができない。
隊員が効率よく推進力を得るフィンワークを身につけていても、潜水活動および流速環境下での活動は精神的、身体的な負担が大きい。フィンを使用して筋力、持久力を身につける泳力強化訓練を行う機会はなかなかなく、身につけたフィン技術をさらに発揮させる器具がないといった問題がある。
フィンの動き
従来のフィンを浮かせられないのか?
フィンには、水に浮くフィンと水に浮かないフィンがあり、現在災害現場では、水に浮くフィンは使用されていない。
水に浮くフィンはアップキック動作をアシストすると同時に泳ぎのピッチを上げる効果があるが、競技用であるため素足で着用する、フットポケットに角度があるので安全に歩行できない、締め付け感が強くて着用に時間を要するといった点で、災害現場の使用には適さない。また、ウクライナの数名の職人しか作成できず、非常に高価である。
そこで、この「浮く」という性質を災害現場で使用するフィンに生かすことができないかと試行錯誤した結果、プールに置いてあるビート板にヒントを得てEVA素材(Ethylene-VinylAcetateエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)のマットをインソール(中敷き)に加工し、フィンに入れて浮力をもたせてみたらどうかと考えた。
水に浮くフィンと浮かないフィン
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魔法のインソールの効果と作り方