Special
CSRMは「観察と保温」
レスキュー隊員でもできる応急処置がある
スキルステーション【傷病者観察】
まず会話で接触し、精神的にサポートする。全身接触が可能なら全身観察を行う。意識、呼吸回数、呼吸の状態、脈拍数、脈拍の状態、皮膚の湿り気、四肢麻痺、刺激による反応、体温、眼瞼結膜、CRTなど、五感を活用して観察することが重要。パルスオキシメーター、血圧計、体温計、心電計など資器材を活用した観察も有効。
循環血液量減少性ショックは失血によるものと体液の喪失によるものがあり、ショックの5症状は蒼白、虚脱、冷汗、脈拍微弱、呼吸不全で、PRが100以上、BPが90以下、レフィリング遅延、意識レベル低下などからも判断可能。初期評価から治療方針をたて、活動中は常に観察を継続する。
スキルステーション【保温・保護】
保温と保護は、いわば「救助隊によって実施可能な医療行為」。防水シートパッキングは保温と保護の両方の効果がある。コンクリートなどは身体から熱を奪い、失禁なども低体温を招く。低体温は出血傾向を憎悪、酸素消費量を増加させ、重要臓器への悪影響が大。さらに五感による精神的ダメージも大きい。なお、高温環境では保温による悪影響も考えられるので注意が必要。狭隘空間では突起物が多く、防水シートで包むだけでも驚くほど保護できる。
シナリオステーション
シナリオステーションは東京訓練場の地下瓦礫訓練施設を活用して行われる。現場さながらの狭隘空間と障害物を置き、スタッフ扮する生体の要救助者に対し、受講生は指揮進入から人命検索、狭隘空間での要救助者の保温、保護、接触観察、スケッドストレッチャーによる救出までを実施する。
参加スタッフ
八櫛徳二郎さん特定非営利活動法人 全国救護活動研究会 代表
現役消防職員として勤務するかたわら、全国救護活動研究会を主宰する。発足は平成10年。平成30年にはクラウドファンディングにより東京都内の自宅に東京訓練場とストレス相談所を建設。材料のみを仕入れ、パワーショベルを借りて自分たちで掘り進め、岩を運んで完成させた。(取材当時)
「阪神淡路大震災の後、以前から身近にあった救助操法は救急医療の観点からは疑問も多かった。そこを変えたいと思い勉強を始めたことが研究会発足につながった。いつか東京に自分たちで自由に開発できる訓練場を作る夢を描き、研究会の法人化を進める中で訓練場建設をクラウドファンディングにより実現した。建設では自力で作業する部分も多くあったが、前に進む原動力となったのは〝多くの方々に支援されている〟という喜びと感動だった。完成した今はその責任というものを感じている。訓練場にはストレス相談所を併設。惨事を目の当たりにした消防士にかかるストレスは他人事ではない。自殺を止めるゲートキーパーが絶対に必要だと感じて建設した」
熊澤光明さん特定非営利活動法人 全国救護活動研究会 副代表・関東サーバントリーダー
平成17年に東京で実施された特殊災害対応訓練に他本部から参加し、八櫛代表と出会う。現役消防職員として勤務するかたわら、副代表、関東地区のリーダースタッフを務める。(取材当時)
「研究会ではそれまでやったことがない技術、考え方に出会った。訓練では特別な資機材は一切使わない。どこの消防本部にもあり、ふだんから消防隊員なら誰でも使える資機材だけで活動できることが特筆できる。と同時に、訓練に参加した際の会員同士の情報交換はもとより、災害現場に応援出動した際に知った顔がある安心感は非常に貴重なものだ。災害医療まできちんと見据えた活動を全国に啓蒙していきたい」