御嶽山を経て取り組んだ噴火災害対応の備え<br>覚悟を決めた松本広域消防局

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御嶽山を経て取り組んだ噴火災害対応の備え
覚悟を決めた松本広域消防局

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松本広域消防局の山岳救助装備
個人装備として登山用ヘルメット、山用のアウター上・下とスパッツ、登山靴、ストックを整備した。
山用の軽量ヘルメット。消防用の保安帽の5分の1の軽さ(約200g)。横に穴が開いていてヒートストレス対策にもなる。
山用のウエア上下。防風・防寒でありながら透湿機能のあるゴアテックスを使ったもの。脇部分にファスナーがあり、温度調整もできる。
スパッツ。下肢を保護し、御嶽山での捜索活動では火山灰の足への侵入を防ぐのに大変役立った。
登山靴。足首を保護し、ソールは岩に耐えられる厚みと滑らないグリップ力があるもので、ある程度軽いものがお勧め。
ストック。隊員の疲労軽減になる。長期戦で交替も容易ではない山では、どれだけ体力を蓄えておくかが重要。
スケッドストレッチャー
御嶽山の傾斜地ではロープで担架を引いて要救助者を搬送しなければならない状況もあり、噴火災害後に総務省消防庁から配備されたもの。
コンパス
登山に欠かせない必須装備。
GPS
緯度経度をGPSで確認し、山地図と照らし合わせて位置を確認する。ヘリと連携する場合にもピンポイントで自分の場所を伝えられる。
個人携行用のガス検知器
二酸化硫黄と硫化水素を検知する。
火山性ガスを含む噴気活動が継続した焼岳で、実際に計測する訓練も行った。(写真/松本広域消防局)
噴火前から装備していたもの
雪中の検索を行うゾンデ棒。
レスキューワイヤー
低所からの吊り上げなどに利用するワイヤーロープ。
ロープレスキューツール一式
山間地救助用に使用するツールとして以前より備え、訓練を行っている。
御嶽山噴火災害での火山灰の状態
足全体が粘り気のある泥に埋まってしまっている。
灰は細かいガラス状になっているので、ゴーグルについた灰をぬぐうと、ゴーグルに傷がついて使えなくなってしまった。
上條信男

上條信男松本広域消防局 警防課 特別救助隊長 消防司令

「前進指揮所と剣ヶ峰頂上で活動隊の指揮を執ったが、現場の隊員達は人命救助のために過酷な環境の中、組織を超えて連携し果敢に活動した。御嶽山では火山性微動や風向きによる火山性ガス濃度上昇のため、退避、待機、活動中止、下山せざるを得ない状況もあった。2時間かけて登山し、要救助者を目の前にして現場を引き揚げる選択は、レスキューとして受け入れ難い。現場指揮は、現場の声を尊重しながら最悪の事態を想定し、明確な判断基準を持つことが必要」

「専用の装備」と「知識」のない状態で山に入ることは、丸腰で戦場に突入するのと同じ。 平成26年の御嶽山噴火災害でいち早く、県内応援で出動した、噴火翌日より救助活動を経験した松本広域消防局。 県内に多数の山を抱え、管内にも活火山を2座も抱える同局は、噴火災害への対応にいち早く取り組み始めた。 [写真]2015年8月、御嶽山で再捜索にあたる松本広域消防局の特別救助隊。固くなった灰を掘り起し、必死で探すも行方不明者6名中1名しか発見できなかった。(写真/松本広域消防局)
写真◎小貝哲夫(特記を除く) Jレスキュー2016年7月号掲載記事

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