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千葉県市原市のダムで水上メガソーラーの火災発生!
ドラゴンハイパー・コマンドユニット出動
台風15号が突きつけた新たな課題
写真・文◎市原市消防局
Jレスキュー2020年1月号掲載記事
通常の消防体制では消せない
令和元年9月9日月曜日、千葉県市原市山倉に所在する山倉ダムの水上メガソーラー(太陽光発電所)が破損し火災が発生した。
この「水上メガソーラー」は、5万枚の太陽光パネルが使用され、面積はおよそ18ヘクタールと、水上ソーラーとしてはこの当時で国内最大規模。9日未明に台風15号が暴風域を伴って千葉県を通過すると、風の影響で太陽光パネルがめくりあがり、重なったと思われる。
ソーラー火災を13時00分に覚知した市原市消防局は、「その他火災」の指令により管轄の中央消防署から指揮車、水槽車が出動し、隣接署からもポンプ車、水槽車を出動させ計5台が同時出動した。
指令災害現場は山倉ダム。湖面上に設置している太陽電池モジュールが多数延焼し、黒煙が噴出していた。負傷者、隣接建物への延焼危険はなかったが、車両進入は不可能であり消火活動は困難であった。
出火場所は、最も近い岸からでも約80m以上離れた場所だったため、通常の消防車の放水距離(20~30m)では陸からの消火は不可能であった。また、太陽電池モジュールへの送電は遮断したものの、太陽電池モジュールに陽が当たると自動発電し、常時通電状態になることから、船舶等で接近し消火するのは感電の危険性があった。そこで二次災害を考慮し、放水距離が70~100mある大容量送水ポンプ車と大型放水砲搭載ホース延長車(以後2台を総称して、※DHCUと記載)での岸からの長距離放水が必要と判断した。
現場指揮本部を設置すると、指揮隊長、山倉ダム施設管理者およびソーラーパネル管理者との協議が行われ、関係機関からDHCUの使用許可を得た。というのも、DHCUの進入経路を確保するためには、車両進入禁止である山倉ダムの遊歩道を開放してもらう必要があった。また取水のためには金属フェンスの一部撤去が必要となった。これらを行ったうえで初めてDHCUによる消火活動が可能になった。
※ (DHCUはドラゴンハイパー・コマンドユニットの略)
課題の多い消火方法と隊員の安全管理
本件火災の要因には、台風15号が千葉市で最大瞬間風速毎秒50mを超える強風を記録していたことが挙げられる。市原市内でも、街路樹が倒れたり、ゴルフ練習場の鉄柱が倒壊するなどの被害が発生していることから、記録はないものの、最大瞬間風速は毎秒50mを超えていた可能性がある。こうした想定を超える強風に、太陽電池モジュールを固定している係留ワイヤーとアンカーが耐えられずに破損してしまい、強風に押し流され、太陽電池モジュールが折り重なり、損壊し、出火したと考えられる。
一般的に太陽光発電所は、稼働を停止しても太陽光パネルに陽が当たると電流が発生するため、損壊による漏電などで発火する可能性があり、太陽電池モジュールが発電し続けることで発火の確率は非常に高くなる。さらに発電された電気に消防隊員が感電する事故につながる危険性も十分に考えられる。
全国的に太陽光発電システムが普及しているが、火災時の対策・対応はまだ確立されていない。ソーラーパネル火災の消火活動では、損壊した太陽電池モジュールや配線からの漏電や放水による感電、燃焼による有毒ガスの発生、太陽電池モジュールの落下などの危険に留意して、組織の連携、意思疎通を深めて活動にあたる必要がある。