ドローン隊による災害対応訓練 Case06:豊中市消防局

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ドローン隊による災害対応訓練 Case06:豊中市消防局

2024年4月からドローン隊の運用を開始した豊中市消防局。二等無人航空機操縦士資格を持つ隊員が多く、ドローンスクールに協力を仰いで操縦技術を磨いている。今回、大規模災害や特殊災害の初動で情報収集にドローンを活用するために実施した訓練を取材した。

写真◎森位敦樹(特記を除く)
Jレスキュー2025年1月号掲載記事

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case06 豊中市消防局

2024年4月にドローン隊「KITE」新設

豊中市消防局は、令和6年4月から災害対応ドローン隊『KITE(カイト)』の運用を開始した。

同隊は、消防職員14名のほか、消防団員も4名加えた編成としていることが特徴だ。消防職員のうち8名が二等無人航空機操縦士資格を取得し、夜間飛行と目視外飛行の限定を解除している。令和6年度中に消防団員も同資格を取得予定だ。

ドローンの機体は、DJI社製の『Matrice 300RTK』を2機導入し、赤外線カメラとナイトビジョンカメラをそれぞれ搭載し要救助者とコンタクトを取るためのスピーカーも設置している。また、機体と一緒に運用するノートPCにマッピングソフトをインストールし、撮影した画像を基にオルソ画像の作成も可能としている。

ドローンの運用開始当初から、資格の取得に加えて充実した資機材を導入しているのには、明確な目的がある。広域災害や建物火災、NBC災害といった現場で活動する隊員の安全管理が重要となる災害で、ドローンを活用して初動の情報収集を行うためだ。

災害対応ドローン隊「KITE」のワッペンと保有する資機材。
災害対応ドローン隊「KITE」のワッペンと保有する資機材。

ドローンスクールの活用で操縦技術を向上

同消防局では、ドローン操縦者の育成で、豊中市に隣接する兵庫県伊丹市に拠点を置く国土交通省の登録講習機関であるドローンスクール『操学舘ドローンスクール』に協力を仰ぎ、国家資格の取得や操縦技術の向上を実現した。同スクールには、特定非営利活動法人国際レスキューシステム研究機構が認定する『NIST sUAV-STM Proctor(試験監督者)』の資格を持つ講師が在籍している。

国際レスキューシステム研究機構は、先端技術による災害対応の高度化と、その普及を図ることを目的としている。『NIST sUAV-STM』は、NIST(National Institute of Standards and Technology:アメリカ国立標準技術研究所)が定めたドローン操縦技術の定量的かつ公平公正に測定できる評価テストのこと。バケツなど底部を持つ円筒形のターゲットを用いて、ドローンを操縦して、複数のターゲットの底部に記載されている記号やマークの撮影や確認を完了するまでのタイムを測定して行う。

実際の災害を参考に訓練想定を作成

豊中市消防局は令和6年10月17・18日の2日間、兵庫県三木市にある兵庫県広域防災センターで、『令和6年度災害対応ドローン総合技術訓練』を実施した。

同訓練の想定は、操学舘ドローンスクールのNIST sUAV-STM Proctorが作成を担当。消防の訓練に日本で初めてNIST sUAV-STMの要素を盛り込んだものとなっている。訓練は、NIST sUAV-STMテストと実際に発生した災害事例を参考に作成された3想定で実施された。訓練の構成を担当した、操学舘ドローンスクールの東康弘は次のように話す。

「今回の訓練想定は、豊中市消防局の“災害の初動でドローンを情報収集に活用したい”という意向を反映して、『建物火災要救助者捜索訓練』と『広域災害要救助者捜索訓練』、『CSR/CBRNE災害初動調査訓練』の3想定を作成しました。建物火災の想定は令和3年12月に発生した大阪市北区のビル火災、広域災害の想定は令和6年能登半島地震、CBRNEの想定は令和4年6月に千葉県野田市で発生した電車内異臭騒ぎ。これらの事案を参考に想定を作成しました。いずれも初動にドローンで情報収集することで、活動方針に大きな影響を与える情報が得られる災害です」

訓練には両日で豊中市消防局のKITEのドローン操縦士が参加。保有する機体以外に、狭隘部での飛行を行うCSR/CBRNE災害初動調査訓練には操学舘ドローンスクールの所持するDJI製の小型ドローン『Avata 2』を、NIST sUAV-STMは同スクールのDJI製中型ドローン『Mavic 3』を使用して実施した。

NIST sUAV-STM テスト

【テスト要領】

今回の訓練で実施した「NIST sUAV-STM」は、5種類あるうちの「Position」「Travers」「Orbit」の3種類。Positionは指定場所を正しく飛行することを、Traversは大きく周回飛行を、Orbitは目標物の周りを小さく周回飛行することを求められる。目視内飛行と目視外飛行をそれぞれ使いわけて実施。

【使用機体】

DJI Mavic 3

「NIST sUAV-STM」を実施している際の全景。5個のターゲットを組み合わせた集合体を等間隔で一直線に3カ所設置して行う。
「NIST sUAV-STM」を実施している際の全景。5個のターゲットを組み合わせた集合体を等間隔で一直線に3カ所設置して行う。
底部が撮影できていない
底部の一部が欠けている
底部が欠けることなく撮影できている
テストで使用する直径20cmのターゲット(バケツ)。底部には、ターゲットの種類を表す数字とアルファベットのほか、視力検査の際に用いるランドルト環が大小5種類で描かれている。底部が欠けることなく撮影できれば5点を加算する。底部の一部が欠けていたり、底部の一部分しか撮影されてない場合は1点の加算となる。

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