Special
ドローン飛行デモンストレーション
Case05:にかほ市消防本部
今回は秋田県のにかほ市消防本部において開催されたVFR社によるドローンの飛行デモンストレーションの様子をレポートする。使用されたのは、次世代型ドローンと噂が高い「EVO Max」。消防本部の担当者や現場で運用しているドローンパイロット、またVFR社営業担当者のコメントから、その可能性を探る。
写真・文◎小貝哲夫
Jレスキュー2024年11月号掲載記事
case05 にかほ市消防本部
各地で積極的にデモンストレーションを開催
昨年末からAutel Robotics社製の次世代インテリジェントドローン「EVO Max」の国内販売を開始したVFRは、各地の消防拠点で積極的に飛行デモンストレーションを実施している。2024年8月20日午後、秋田県のにかほ市消防本部の敷地内で飛行デモンストレーションが開催された。
国内の消防組織が採用しているドローンは、DJIの製品が高いシェアを誇っている。そこに割って入ろうとしているのがEVO Maxである。同機種は、最先端の自律技術と革新的な障害物回避機能を組み合わせた、次世代のインテリジェントドローンである。また従来型の高性能ドローンに搭載されていた使用頻度の低い機能を撤廃し、必要な機能のみを搭載しているのが大きな特徴で、使いやすさが大きく向上した。
Autel Roboticsは、2014年に設立した本社を深圳に置く企業で、米国/ドイツ/イタリア/シンガポールにも拠点を持つ。米国シカゴ市の消防と警察に配備された実績があり、セキュリティや産業に特化したドローンを提供している。
着陸時のアシスト機能が充実
今回の飛行デモンストレーションは、屋外で90分の予定で開催された。まずVFRの担当者が10分ほどモニターを見ながらEVO Maxの機能を説明した後、実際に操縦しながらモニターを介して機能をチェック。問題なく飛行することができた。
ドローン運用時は、着陸の場面が最も緊張を強いられる。しかしEVO Maxは、どんな速度で降下しても地面が近づくと自動に減速してソフトランディングを行う。これは同機種に搭載されたミリ波レーダーによるもので、地面が荒れている状況であればプロポに着陸を続けるかどうかのメッセージが表示される機能もある。
最近、新しくオプションに加わったスピーカーライトの実演では、プロポに内蔵したマイク経由で、肉眼では点にみえる距離に浮かぶドローンから明瞭な音声が聞こえてくると、消防職員からどよめきが起こった。担当者によると、500mほど離れていても有効な範囲とのことで、災害現場での活用が期待できる。
消防のための機能が多数
カメラ機能は、ワイドカメラとズームカメラ、赤外線カメラ、レーザー距離計を標準で備えており、静止画の画質は8Kとなる。10倍光学ズームと、最大で160倍ハイブリッドズームの機能も持つ。また、熱源や人、車、炎、煙を識別するAI識別機能があり、上空からの要救助者の検索に威力を発揮する。さらに、ターゲットの緯度と経度の表示、赤外線カメラの等温線を火災時の温度に合わせられる火災モードなど、消防の現場で必要とする機能のほとんどが標準装備されている。
今回のデモ飛行で使用した機体の仕様で最大飛行時間が42分、防塵・防水の保護等級がIP43、最大風圧抵抗が秒速12mまでとなる。なお、強風下でもジンバルの性能により画像は安定している。また、運用限界高度が約7km、対温度耐性がマイナス20℃~50℃と過酷な自然環境での運用も可能だ。映像伝達距離は6kmとなる。このほか、プロポ画面の共有なども行える。
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注目の「衝突しない」機能とは?