―アメリカ民間救助事情― <br>カヌーが紡ぐ命の連携

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―アメリカ民間救助事情―
カヌーが紡ぐ命の連携

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国や自治体との連携

以前は、民間からの協力が拒否される状況であったが、現在では消防署がこれらのNPOに支援を要請するほど認知され、連携が進んでいる。

大規模災害が発生すると、民間組織は緊急事態対策室(EOC)内またはその近くに人員を配置し、直ちに現場へ出動できるよう準備を整える。公的機関が日没後に活動を制限される場合でも、民間組織は臨機応変な対応力と柔軟性を持ち、活動を継続することが可能だ。さらに、「クラウドソース・レスキュー」のようなマッチングアプリを活用し、X(旧Twitter)などのSNSで助けを求める被災者と救助者を繋ぐことで、効率的な情報共有と救助活動を実現している。

アメリカ民間救助事情 東京消防庁渋谷消防署
ゴーグルを付けて活動するアメリカの救助犬。
広がる活動範囲と組織の実態

民間救助組織「ケイジャン・ネイビー」は、ハリケーン・ハービー以降、バイオハザード(塩素ガス漏れや人食いバクテリア)が発生した水害、新型コロナウイルス禍での医療物資供給(高齢者や免疫不全者への配慮を含む)、ヒューストンでの大寒波によるライフライン断絶、内陸部のノースカロライナ州を襲ったハリケーンなど、多岐にわたる災害に対応している。

PTSDへの向き合い

ポール氏は長年、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究も続けている。アメリカでは長らく認識が遅れていたが、2017年には地元のセラピストと協力してグループセラピーを行っている。

このような官民の協働は、災害対応に新たな可能性を開くものとして、今後さらなる発展が期待されている。

アメリカ民間救助事情 東京消防庁渋谷消防署
東京消防庁渋谷消防署で開催された研修会の様子。
アメリカ民間救助事情 東京消防庁渋谷消防署
通訳を務めているのは、渋谷消防署代々木3部中隊長の濱本消防司令補。
■関連リンク
2025年5月29日、東京消防庁渋谷消防署に民間捜索救助隊員ポール・ミデンドルフ氏が訪れ、アメリカを何度も襲うハリケーン災害での救急救助活動、民間(NPO法人)としての救助団体の活動などを同消防署の職員向けに語った。その模様をレポートする。
災害写真◎ポール・ミデンドルフ提供

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