孤立集落を救え!<br>栃木県孤立集落支援実動訓練

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孤立集落を救え!
栃木県孤立集落支援実動訓練

令和7年5月13日、栃木県と佐野市が初の大規模な栃木県孤立集落支援実動訓練を実施。自衛隊や消防など14機関が参加し、ヘリコプターやドローンも活用した実践的訓練で、地域の災害対応力向上を図った。

写真◎澤田美織子

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孤立集落を救え!山あいの訓練がつなぐ「命のルート」

栃木県と佐野市は2025年(令和7年)5月13日、大規模地震によって道路が寸断され、山間部の集落が孤立する事態を想定した大規模な防災訓練を、佐野市内で初めて実施した。この訓練には県や警察、消防、陸上自衛隊をはじめとする14の機関が参加し、住民の救助や物資の輸送といった災害対応行動の実効性を確認した。参加者は関係機関の職員約60名に加え、地元住民約20名が避難者役として加わり、総勢およそ80名による実践的な訓練が行われた。

栃木県孤立集落支援実動訓練
現地情報収集訓練では、佐野市消防本部の指揮隊をはじめとする警察や自衛隊が連携し、被害状況や孤立地域に取り残された要救助者情報の集約と共有が図られた。

訓練の主会場となった旧氷室小学校の校庭では、陸上自衛隊のヘリコプターが着陸し、避難する住民の誘導訓練が実施された。想定は震度6強の地震により土砂崩れが発生し、山あいの集落が完全に孤立したというもので、自衛隊や警察、消防などが連携して孤立集落へオフロードバイクでアクセスし、住民の安全確保と搬送にあたる手順を確認した。

さらに、自衛隊の隊員はヘリコプターからロープで地上に降下し、住民の元へ駆けつけ、避難誘導を行った後、住民が順にヘリコプターへ乗り込むまでの一連の流れを丁寧に確認した。

また、校舎の屋上からは佐野市消防本部が運用するドローンが離陸し、約120メートル上空から現場の被災状況を撮影・確認する訓練も行われ、空からの情報収集体制の有効性が検証された。

栃木県孤立集落支援実動訓練
佐野市消防団の団員がスマートフォンの業務支援アプリを利用し、被害状況や活動情報を共有する。

訓練の背景には、昨年発生した能登半島地震を受けて、栃木県が実施した調査結果がある。調査では、県内で地震や大雨により孤立の恐れがある集落が544カ所存在することが判明し、なかでも佐野市内には90カ所あり同県の市町村で最も多いことから、地域の災害対応力の強化が喫緊の課題とされている。今回の訓練はその一環として行われ、今後は訓練で浮かび上がった課題を精査し、市町ごとの実情に即した災害対策計画の策定や、継続的な訓練の実施、迅速な対応体制の構築につなげていく方針だ。

このような訓練を通じて、行政機関と住民が一体となった災害対応力の向上が図られ、今後発生が予想される大規模災害への備えが着実に進められていくことが期待される。

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陸上自衛隊、消防防災航空隊による救助が開始される

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