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江ノ電が列車とハイブリッド車の事故想定訓練を実施
鎌倉市消防本部が参加
神奈川県の江ノ島電鉄株式会社は2025年11月21日、鎌倉市消防本部と神奈川県警察鎌倉警察署と合同で「2025年度異常時総合合同訓練」を実施した。
写真・文◎木本晃彦
毎年実施する総合合同訓練
神奈川県の藤沢市と鎌倉市を結ぶ江ノ島電鉄は毎年、鎌倉市消防本部、神奈川県警察鎌倉警察署と合同で異常時総合合同訓練を行っている。今年度は、ハイブリッド自動車に焦点をあてた訓練を実施した。
想定は、ハイブリッド自動車が遮断機のおりた踏切内へ進入し、非常停止措置を行った列車と接触し脱線。ハイブリッド車の車内へ閉じ込められた運転者を救助するというもの。江ノ島電鉄は、踏切以外に江ノ島駅から腰越駅間に併用軌道(路面区間)が存在することから、自動車との接触事故対策は重要な課題でもある。
訓練は、鉄道車両の整備を行う鎌倉市内の極楽寺検車区内で実施された。鎌倉市消防本部からは鎌倉消防署深沢出張所所属の特別救助隊が救助工作車とともに参加したほか、同消防署七里ガ浜出張所配置の水槽付消防ポンプ自動車および救急車が訓練に臨んだ。鎌倉警察署からはパトロールカー1台が参加した。
訓練開始にあたり、江ノ島電鉄の安全統括管理者である鈴木孝浩氏から「踏切上で発生し得る重大事故に、警察・消防・鉄道各機関が連携。迅速かつ的確に対応する体制を確認・強化することを目的とする」という訓練目的が訓示され、「ハイブリッド車はガソリンと電気を動力源にすることから複雑な構造。火災や感電の恐れがあることを念頭におくこと」という重要事項が伝えられた。
訓練は、停車していた鉄道車両が警笛を鳴らしながら移動し、ハイブリッド車と衝突したという場面から開始された。鉄道車両の乗務員は停止処置後に消火器を携行してハイブリッド車へ接近。衝突した自動車がハイブリッド車と認識したため絶縁距離を取り、破損した窓から自動車運転者の意識があることを確認する。事故状況を鉄道指令へ無線報告すると、鉄道指令からは、警察・消防をはじめ、鉄道関係各所へ事故状況報告と出動要請が行われた。
対策本部が立ち上げられ、事故現場では乗務員が絶縁距離を取りながら、負傷した自動車運転者へ声掛けを続ける。鉄道指令からの派遣者が事故現場に到着して現地対策本部を設置。警察や応援の鉄道職員も到着し、鉄道車両内へ取り残された乗客の避難が開始された。
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ハイブリッド車の運転者の救助を開始