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【コラム】消防装備のマメ知識
「アドブルーの管理について」
消防職員のための消防装備のマメ知識。今回は「アドブルーの管理について」紹介しよう。
写真・文◎橋本政靖
Jレスキュー2024年9月号掲載
アドブルーの管理について
近年、消防自動車の多くは、ディーゼル機関の排出ガス浄化装置である尿素SCRシステムが搭載されている。このシステムは、排気系統にSCR触媒を設置し、尿素水を噴霧することで窒素酸化物を分解してクリーンにする装置である。このシステムには「アドブルー」と呼ばれる専用の尿素水溶液が必要であり、アドブルー専用タンクが備えられている。
このアドブルーは単に補給すればよいだけではなく、特に消防自動車特有のトラブルも存在する。一般的に消防自動車は運送トラックなどと比べて走行距離が少なく、走行せずに毎日の点検のためのみでエンジンを始動させることも多い。そのため、シャーシメーカーの想定よりはるかに少ない量のアドブルー消費量しかないため、タンク内のアドブルーが劣化する恐れがある。アドブルーは高温下では劣化が進み、品質を保持できるのが10℃以下で約3年であるのに対して、35℃では約6カ月、40℃では4カ月程度と極端に短くなる。また、おおむねマイナス10℃以下の低温化では結晶化するが、劣化はせず常温に戻れば問題なく使用可能である。そのため、おおむね1年程度で劣化が進む前に使い切るのが理想である。この品質の劣化したアドブルーを使用すると、排出ガス浄化機能を担うSCR触媒に目詰まりや腐食、故障するリスクが高くなる可能性がある。この排出ガス処理系統は、故障すると高額な修繕費がかかることが多く、限られた予算や装備する管理側からみれば故障しないことが理想である。
一般的なタンク容量とタンク満タン時の稼働時間、または走行距離であるが、小型車でタンク容量15リットル、500時間、1万km。中型車で30リットル、1000時間、2万km。大型車で50リットル、1500時間、3万km程度の一例となるが、車両や走行条件等により違いがある。高頻度で使用しない車両、特に走行の少ない特殊車両や消防団車両などでは、この稼働時間や走行距離より大幅に少ないことから、アドブルーが劣化するリスクが高まる。
この対策としては、補充時に満タンまで入れずに半分程度とすることや、車検毎にアドブルーを入れ替えるなどが挙げられる。また、機関員席のパネルメーターにはアドブルー液量計が装備されており、液量が1/4を切らないように適宜補充するようにしたい。

