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【コラム】水害時の排水活動
これから夏に入ると、梅雨やゲリラ豪雨、台風などにより降水量が増えてくる。豪雨時、消防は救助や水防などの活動を行うが、その際に消防ポンプを活用して排水作業を実施する場合がある。今回はこの排水作業時に注意すべきことを考えたい。
写真・文◎橋本政靖(水害写真◎編集部)
水害時の排水活動
消防ポンプ自動車に搭載されているA-2級ポンプを使った場合、一般的な25mプールでさえ排水に約2時間もかかってしまう。そのため豪雨時の排水作業に消防ポンプを用いるのは、あまり現実的とは言えないかもしれない。それでも被災者の心情を鑑みれば、排水作業を行う場合もあるだろう。そうした場合にまず注意しなければならないのが車両の部署位置だ。排水作業時は冠水場所ギリギリの位置に部署することが多いが、少しずつ増水してくると退避路が冠水し、最悪の場合は車両が水没する可能性がある。そのため、部署時には安全に退避できる場所を選定し、排水作業中は周囲の水位状況を注視しておかなければならない。そして増水の傾向がある場合には、早期に退避することが重要である。
次に気を付けたいのが水中の異物だ。排水する水には異物が大量に混入しているため、真空ポンプを作動させて吸水する際に砂塵を吸い込まないように注意する必要がある。その後、排水を行っている時に草片などがちりよけ籠や吸水ストレーナーに堆積してしまうと、閉塞が生じ吸水が不可能になる。細長い石や木片などにいたってはストレーナーを通過してしまう場合もある。それらが主ポンプに巻き込まれるとインペラ等の破損原因となるため、排水作業中は連成計等を注視し、排水初期と比較して負圧が大きくなりつつある場合には適宜清掃を行うようにする。
また、排水作業は長時間かつ高回転で消防ポンプを稼働させて行うため、潤滑や冷却を欠かすことができない。定期的にポンプメタル等へのグリス給油作業を行い、補助冷却系統に通水してサブラジエーター、ポンプミッション・オイルクーラー、メカニカルシールを冷却しよう。なお、この補助冷却系統では適宜メイン回路とサブ回路を切り替えて、ストレーナーの詰まりを除去しておく。
排水作業を終了した後も行うべきことがある。ポンプ車のドレン系統や補助冷却系清水は配管が細いため塵埃等が詰まりやすい。そのため作業後は配管の洗浄やブラッシングを行い、塵埃の除去を徹底したほうがいいだろう。