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【コラム】消防自動車「じぷた」は実車で存在していた!
名作絵本「しょうぼうじどうしゃ じぷた」を忠実に再現した消防車が、イベントで大人から子供まで人気を博していた。
写真◎編集部
「しょうぼうじどうしゃ じぷた」とは
誰もが子供の頃に読んだことのある絵本。大人になっても忘れられない一冊があるだろう。男の子は乗り物に興味を抱き、鉄道や飛行機、街で見かける働く車を見ては興奮したものだ。中でもサイレンを鳴らして走る消防車や救急車には「ヒーロー」としての要素があることからイベントでも人気の働く車だ。
消防車の絵本は数多くあるが、その中でも長きにわたり愛されて続けている絵本「しょうぼうじどうしゃ じぷた」(作:渡辺 茂男 /絵:山本 忠敬/出版社:福音館書店)をご存じだろうか?この絵本は、1963年に「月間こどものとも」に登場し、1966年に第1刷が発行された、大人から子供までに50年以上愛されている名作絵本だ。
物語は、とある消防署にある4台の消防車の紹介から始まる。ハシゴ車の「のっぽくん」は、長いハシゴを自慢にしている。ポンプ車の「ぱんぷくん」は、強いポンプが自慢だ。救急車の「いちもくさん」は、けが人を素早く運ぶことが自慢だ。そして、主人公の消防自動車「じぷた」。消防署の中では一番小さく古いジープを改造した消防車である。小さな火事ならたちまち消してしまう働き者。けれど、大きな火事のときに活躍できないので、自分のことを、なんだかちっぽけで悲しい存在だと思っている。
そんなある日、山小屋が火事になり山火事に発展しそうになる。そこは道が狭く「ぽんぷくん」や「のっぽくん」では入っていけない場所であった。そこで消防署長さんが「じぷた」に言った。
「よし。じぷただ。たのむぞ!」
細くて険しい山道はジープの「じぷた」ならどんどん突き進み火事現場に到着、消火活動を始める。果たしてこの火事を「じぷた」は消すことができるのだろうか?
「じぷた」が愛され続ける理由には、「じぷた」と自分を照らし合わせてみる人が多い。普段控えめな性格で目立たない自分。特技があるのに生かすことができない。それでもいつか自分を必要としてくれて、活躍できる日がやってくる。そんな自分を応援してくれているような絵本なのかもしれない。
「じぷた」は存在する
絵本に登場する「じぷた」は上尾市消防本部大谷分署を作者がモデルにしているが、この絵本をこよなく愛して、忠実に「じぷた」を再現した人がいる。それは茨城県筑西市はザ・ヒロサワ・シティに年内オープン予定の『ユメノバ』にある消防自動車博物館の館長・鈴木靖幸だ。
絵本に登場するジープとほぼ同型となる三菱ウイルスCJ3B-J7型の消防車は、愛知県の三菱電機工業・名古屋工場所有の自衛消防車として使用されていたもので、退役したのちにスクラップの状態で入手した。ほぼ原形をとどめないようなベースシャーシの復元作業に着手し、当時の原形を忠実に再現させている。現車は自走も可能で、消防出初式やイベントなどで大人から子供まで大人気だ。この「じぷた」に会いに遠方から訪れる人も少なくはない。絵本から飛び出した「じぷた」は、これからも多くの人々に愛され続けていくだろう。