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【第28回全国消防救助シンポジウム】
火災救助の新たなスタンダードとは

2025年(令和7年)12月11日、東京・中央区の銀座ブロッサム中央会館で、『第28回全国消防救助シンポジウム』が開催された。

写真◎編集部

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どうすれば隊員の安全を確保できるか

2025年12月11日、第28回全国消防救助シンポジウムが、銀座ブロッサムでの対面開催およびオンライン同時配信にて実施された。

今年度のテーマは「火災時における救助活動対応能力の向上」。

最初に、特別講演に登壇した特定非営利活動法人ジャパン・タスクフォースは、安全な火災対応のキーワードとして「LIFE」を提唱。火災の状況を、初動で見極め、緊急時の退避方法までを考える、「消防活動」と「隊員の安全」を両立した消火戦略に、会場で参加した多くの消防職員の方々が、熱心に耳を傾け、メモを取っていた。

また、午後の部で特別講演に登壇した消防研究センターの大津暢人研究官は、「火災出動における消防職員の殉職および受傷事故の発生傾向」と題した統計分析を発表。その結果、殉職と受傷では発生の主原因が明確に異なることが浮き彫りになった。殉職の主要因が「建物の崩壊」「濃煙」「火炎」であるのに対し、受傷は「物体の落下」「熱中症」「転倒」が上位を占める。このデータは、受傷事故の延長線上に必ずしも殉職があるわけではないという実態を示唆している。

さらに、各本部の事例発表では、広域化に伴い再構築した警防体制、緊急時に即応するための指揮隊の状況把握、ハンズフリー資機材の有効性、窮地を脱するためのチーム力の重要性など、多角的な議論が交わされた。

開会式での大沢博消防庁長官のご挨拶、閉会式での消防庁国民保護・防災部の桜井泰典参事官のお言葉でも、現代建物の高気密化、高断熱化による火災性状の変化について触れられ、対応する消防の対応能力の向上、安全確保の必要性を再認識させられるシンポジウムであった。

第28回全国消防救助シンポジウム
最初の講演は、特定非営利活動法人ジャパン・タスクフォースの栁田健一郎氏。テーマは「火を知り、命を守る―火災現場で生き抜く力―」でした。
第28回全国消防救助シンポジウム
消防庁長官 大沢博氏に代わり、開会のご挨拶をされた、消防庁国民保護防災部長 門前浩司氏。
第28回全国消防救助シンポジウム
祝辞は、全国消防長会会長の市川博三氏。
第28回全国消防救助シンポジウム
特定非営利活動法人ジャパン・タスクフォースの栁田健一郎氏。

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