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引揚救助にフルハーネスで挑戦!
全国大会出場を決める
―京都市消防局―

第53回消防救助技術東近畿地区指導会の引揚救助に出場した京都市消防局チームが、フルハーネスを使用して全国大会出場を決めた。

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東近畿地区大会でフルハーネスが選択制に

一般財団法人全国消防協会東近畿地区支部では、令和7年度の消防救助技術指導会において、「引揚救助」種目におけるフルハーネスの使用「選択制」を提案し、同地区運営部より正式に認められた。この決定により、京都市消防局の参加隊は、フルハーネスを選択して出場し、全国大会出場を決めた。

この取り組みに先立って、京都市消防局では令和6年度に先刻消防救助技術大会研究会専門部会において、意見提出として「身体結索の代わりにフルハーネスの着装を可とする」案を提出している。

この選択制導入の背景として、同消防局は主に2つの事項を挙げる。1つは、全国各地の指導会訓練において転落事故が発生していること。訓練中の事で隊員が怪我を負い、実際の現場活動に支障が出るケースも少なくない事態を受け、安全性の高い装備の導入と、それを実践的な訓練に反映させることの重要性を訴える。2つめの目的は、実災害対応時の装備(現実)との乖離を埋めることである。指導会の手技は、旧来の三つ打ちロープや簡易的な小綱による座席結びであるが、実際の現場では京都市消防局としてはフルハーネスと網構造ロープで活動をしており、他の本部をみても身体確保にはフルハーネスが使用されており、そうした実際との乖離が大きく、安全性や現実性の面で課題があると考えた。

第53回消防救助技術東近畿地区指導会 京都市消防局
フルハーネスの選択制を提案した本部として京都市消防局チームは、第53回消防救助技術東近畿地区指導会でフルハーネスによる引揚救助に挑んだ。(写真/中井俊治)
第53回消防救助技術東近畿地区指導会 京都市消防局
ポイントは高所からの降下時の安全性。降下も問題なく行えている。(写真/中井俊治)
第53回消防救助技術東近畿地区指導会 京都市消防局
救助ロープもビレイも身体の前側で結着する。(写真/中井俊治)

消防局のマニュアルも全面改訂へ

京都市消防局は、かねてよりロープレスキューの技術向上に力を入れており、平成25年には独自のロープレスキューマニュアルを策定。だがそれから10年以上が経ち、資機材の進化や現場の状況の変化に対応するため、随時、追加式で技術解説の更新を行ってきたが、重複や表現方法の不統一が発生している状況であったため、プロジェクトチームを発足させ、令和7年度事業として体系的な全面改訂が行われている。年度中に新マニュアルを完成させ、次年度以降は特別高度救助隊から署救助隊へ段階的に落とし込んでいく計画である。

併せて京都市消防局では救助の体制見直しを図り、各隊に専門分野を付与する方式を導入した。この取り組みについて、救助技術全体を取りまとめる消防局警防部警防課の竹中龍悟消防司令と三本木章仁消防司令補は、救助の専門化、各署特別救助隊発信の専門性の深化が、人材育成、隊員のモチベーションアップにつながっている。各隊の学びを局が後押しするので、地域に合った「京都流」の技術を創り上げてほしいと話す。

今回のフルハーネス選択制の導入は、訓練の安全性と実効性を両立させる一歩であり、時代に即した装備と手法で競い合いながら、現場で真に役立つスキルを磨くための象徴的な取り組みといえる。

第53回消防救助技術東近畿地区指導会 京都市消防局
第53回消防救助技術東近畿地区指導会 京都市消防局
第53回消防救助技術東近畿地区指導会 京都市消防局
第53回消防救助技術東近畿地区指導会の引揚救助にフルハーネス着装で出場した京都市消防局チーム。

フルハーネスを着装して第53回消防救助技術東近畿地区指導会の引揚救助に出場した京都市消防局チームは、全国大会出場を決めた。2025年8月30日に開催される全国消防救助技術大会には従来の三つ打ちロープを使用しての参加となるが、救助技術指導会と消防ロープレスキューシーンにおいて大きな出来事であったといえる。(写真/京都市消防局提供)

第53回消防救助技術東近畿地区指導会 京都市消防局
「引揚救助」エントリーのために結成された京都市消防局のメンバー。(写真/中井俊治)
第53回消防救助技術東近畿地区指導会の引揚救助に出場した京都市消防局チームが、フルハーネスを使用して全国大会出場を決めた。