News
【コラム】消防車両の変速方式
MTかATか、その選択と課題
自動車の変速方式はMTとATが基本だが、車種や用途によって選べる方式は異なる。消防車両でもトラックベースや専用シャーシにより、MT・AT・AMTと多様な変速方式が採用されている。
写真・文◎橋本政靖
Jレスキュー2020年5月号掲載記事
MT、ATのほかAMTも一般化
自動車の変速方式には、マニュアルトランスミッション(MT)とオートマチックトランスミッション(AT)がある。
MTには変速レバーとクラッチがあり、クラッチ、アクセル、変速レバーを使用してギアを切り替えて走行する。これに対してATは、走行時は基本的にDレンジに入れれば車速に合わせて自動的に変速されるためにギア操作が不要となる。
基本的にはMTかATかの選択はできるが、シャーシによってはMTのみ、あるいはATのみの場合もある。またトラックベースではMTのみのラインナップだったり、救急車やはしご車専用シャーシではATのみの場合もある。また、トラックベースのATにおいては、乗用車では一般的なPレンジがないことがほとんどである。このほか、近年ではクラッチ操作および変速操作を自動化した機械式自動変速(セミオートマチック)トランスミッション(AMT)なども一般化してきている。
安易なAT化には疑念が残る
MTの長所としては、車体価格が安価なこと、微速や上り坂に優れている、エンジンブレーキが利きやすいことなどが挙げられる。一方、MTの短所は、慣れないと運転しにくい、変速ショックがある、坂道発進が難しいなどが挙げられる。
ATの長所としては、クラッチおよび変速操作がないので運転に集中できるのに対して、車体価格や修理費用が高価、登坂性能やエンジンブレーキが利きにくいため坂道が多い場所では不向きなどの短所が挙げられる。
そのため、従来は都市部などで発進停止を繰り返す場合にはAT、その他で特に坂道が多い場合ではMTが選択されていたが、現在では機関員が自家用車等でATに慣れていることもあり、ATが選択される場合が多くなってきている。
近年は機関員の技量不足が問題となっているが、MTをATにしたからといって運転技術が向上するわけではなく、逆に簡単に見えて技量が低下している場合もあるので、安易にAT化するのも疑念が残るところである。



