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【コラム】消防装備のマメ知識
冬の備え「スタックからの脱出」
Jレスキュー本誌にて好評連載中の「そうか!そうすればいいんだ!ー消防装備のマメ知識ー」。
本格的な雪の季節に入り、災害が発生すればどのうような環境でも出動しなければならない緊急車両。こうした状況下でのスタック防止や脱出について紹介している。
こちらも併せて読んでいただきたい。【コラム】消防装備のマメ知識冬の備え「タイヤチェーン」
写真・文◎橋本政靖(MV写真・編集部)
Jレスキュー2025年1月号掲載記事
これから本格的な雪の季節に入っていく。特に雪氷路や雨でぬれた路面などを走行中にカーブで不安定な状態になると外側に膨らんでしまうアンダーステアや、内側に向いてしまうオーバーステアとなり路外逸脱してしまう。これを防止するために設けられているのが横滑り防止装置(ESC)である。この装置は、走行中に車両状態を監視しており、不安定になった際にアンチブロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)、エンジン出力などを統合的に制御して車体安定化を補助するシステムである。
この横滑り防止装置は万能ではなく、走行時の不安定挙動には優れた能力を発揮するが、雪氷路や泥炭路でスタックして発進不能となった場合には、逆にトラクションコントロールが働くことで逆効果となる場合がある。これはスタックした際にこのシステムが作動するとタイヤの空転やエンジン出力が抑えられ、スタックから脱出するために必要な駆動力が得られなくなるからである。この横滑り防止装置が搭載されている車両は、通常状態では常に作動状態となっているが、このうちトラクションコントロールを解除するためのスイッチが設けられている。スタックして通常で脱出が不可能となった場合には、まず解除スイッチを押下しゆっくりとアクセルを踏み込む、それでも脱出しない場合には車両を可能な範囲で前進・後進を繰り返してタイヤ踏面を平坦に均すようにして脱出を試みる。これでも難しい場合には駆動輪下部にシートやチェーンなどを敷いてタイヤの摩擦力を補助する。また、ゴム製などのスタック脱出用ボードなども市販されているので、スコップ等と合わせて車両に積載しておくことも必要である。
なお、この横滑り防止装置(トラクションコントロール)などは必要な緊急時のみOFFとし、脱出後や通常時は常に作動状態としておく必要がある。このトラクションコントロール装置は車両メーカーにより名称や略称が異なる。これらの装置について詳細は各車両の取り扱い説明書等を熟読して把握しておくようにしたい。また、雪氷路での走行の際は四輪駆動やスタッドレスタイヤなどを過信せず、チェーンなどを併用し安全運転に心がけていただければと思う。