
藤森玄二 Genji Fujimori
Genji Fujimori 大和市消防本部 大和市消防署南分署 消防隊長 消防司令
Interview
「隊長のリーダーシップ」インタビュー01
藤森玄二
ホーストレーニングは「形」ではなく「意味」を知る
消防隊長になり、「ホース延長に自信が持てる隊」を目標に、各県のホースの延長方法等を積極的に学び、当消防本部でも参考にして訓練を実施している。いろいろなホース延長方法等を学んだことがきっかけになり、当消防本部の火災防ぎょの戦術や人員などを考慮した延長方法を検証し、現場の活動に活かしている。
日頃の訓練から隊員に伝えていることは、何事も「形」ではなく、「意味」を知ることと言っている。このホーストレーニングを実施することにも、意味があることをしっかり伝えていきたい。
救助隊が毎日ロープを触るように、消防隊も毎日ホースに触ることで、ホースのさばきがうまくなり、現場で自信を持って「ホース延長」「ホースバッグ展開」「ホース整理」ができるようになると思い、隊員と「ホース技」を磨いている。
このホース技は、ホーストレーニング(ホース延長訓練)を基本とし、折りたたみホースで収納してあるホースバッグ(50mm×2本)からの延長・展開方法とリンクさせことにより、現場に応じた延長(整理)を選択できるようにしている。
そして活動時、積極的にホース整理をすることにより、訓練や災害現場で多く見られるホースのV字破断を未然に防ぎ、ホースが破断することで消火活動に支障をきたすことのないようにホースの整理を心がける。
この訓練で、隊員間の共通認識を高め、現場の状況に適したホース延長を行い、より安全に活動ができるようになった。

接し方にも工夫が必要
通常業務では命令口調は使っていない。一人ひとりを尊重し、同じ目線でいたいと思っている。自隊(消防隊)の構成は19歳から53歳の合計13人で、皆、個性のあるメンバーだが、ホーストレーニングを通じて、同じビジョン(目線)で各種の訓練(業務)を毎当直行うことにより、コミュニケーションもとれ、年齢の差のギャップなど感じない隊である。もちろんだが、隊員の年齢や性格の違いによって「話し方」や「訓練方法」も工夫している。

リーダーには強い信念が必要だ
消防のリーダーは、災害現場等で即、判断(決断)を求められることがある。いろいろな知識、技術、経験に基づいた中から的確に判断、指示、実行ができる「強い信念」を持つリーダーが消防には必要なのではないか。それが私の考える消防のリーダー像である。そのために現役である限り、学ぶこと、訓練することを続けて、隊員の目標となる、隊員を守れる、強くて優しい隊長となれるように努力していきたい。

『消防』が好きであること
今の時代というわけではないが、災害現場では専制(強制)的リーダーシップ、通常の業務での民主型リーダーシップをしっかりと使い分けること、「チームワーク」と「仲良し」が混在しないようにすること。
「情報」は新しいことに価値があり、「知識」は時間が経過しても価値があるもの。情報にはアンテナを高く張り、知識、技術はしっかりと積み重ねていくことが大切である。
今の時代は、厳しいことばかり言い続けると、若い隊員が付いて来ないこともあるので、目線を合わせて、目標を明確にして、我々の考えている着地点はどこかをしっかりと繰り返し伝えていく事が大切だと思う。
あとは、何よりも他人のことを考え、想うことができて、『消防』を好きであること。
※ 専制的リーダーシップ:集団行動のすべてにリーダーが関与し、細部に至るまでリーダーが指示命令を行うスタイル。失敗することが許されない重要プロジェクトへの取り組みや積極性の低いメンバーを率いる場合に高い効果を発揮するが、自分の考えで行動に移す自立心を育むことができないため人材育成には向いていない。
※ 民主的リーダーシップ:作業方針や作業手順などメンバーが直接関わる要素について自分たちで話し合って決定していくスタイル。話し合いが円滑に行こなわれるようにリーダーがサポート役に回ることでメンバーの積極性や団結力を高められるが、短期間で一定の成果を確実に上げなければいけないという状況には向いていない。

継続する力
私の毎朝のルーティーンは、始業前にホーストレーニングを実施すること。「継続は力なり」という言葉があるが、私は「継続する力がチカラなり」だと思っている。
ホーストレーニングをひとつの「ツール」として活用し、自隊での訓練や他隊との合同訓練などで、隊員たちに訓練説明などを行ってもらう、話し方、説明能力、伝え方、訓練進行などを隊員が自分で考えることが、隊員の自信につながり、人材育成につながると思っている。そして、訓練や災害の振り返りの進行役を指名して、皆の前で話すことも「学び」の機会として作っている。
チャンスに恵まれる人は、人との繋がりを大切にしている人であり、役職が変われば、いろいろなChanceが現れ、継続することやChange(チェンジ)をすることにより、個人的にも組織的にも成長していくと思っている。
余談ですが、Chanceの一文字を私の名前のアルファベットにある「G」に変えるとChangeになるし、またそのGと両隣りのngeが抜け、新たにinが入れば次の世代へのChain(チェーン)にもなるのではないかと思っています(笑)。
私の目標は自慢のできる後輩たちを育てて、隊員に自慢してもらえる隊長であり、自慢できる組織の一員であることです。

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