消防ポンプ自動車CD-I型 鳥取県東部広域行政管理組合消防局

日本の消防車両

消防ポンプ自動車CD-I型 鳥取県東部広域行政管理組合消防局

鳥取県東部広域行政管理組合消防局
湖山消防署(鳥取県)

写真◎中井俊治
「日本の消防車2019」掲載記事 

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やっぱり ポンプ車は機動力だ!! 水槽搭載で生まれ変わったマルチなCD-I型

選択肢を増やすポンプ車に

これまで鳥取県東部広域行政管理組合消防局の火災事案では、タンク車とポンプ車をペア出動させることのできる大きな署はともかくとして、人員の都合上一台しか出動できない出張所では、直近部署してすぐに活動開始できるタンク車がどうしても選択された。

管内には海沿いを中心として木造密集地域が並び、市街地などに狭隘路が多い。さらに林野火災では小型動力ポンプを積載したポンプ車が必要不可欠であったが、タンク車のような機動力ある運用ができないデメリットは大きい。これまでも隊員から水槽の要望は挙がっていたが、仕様が大きく変わってしまうために二の足を踏んでいた。

「出動の選択肢を広げられる車両にすること」。それが仕様作成を担当した、消防総務課管理係(現在は鳥取消防署勤務)田中淳消防司令補(取材当時)の一番の願いであった。

コンセプトとして据えたのは、機動性が高く、一台で活動を完結できるポンプ車。平成28年から行われた仕様作成では、湖山消防署まで何度も足を運び、現場の意見を吸い上げた。また鳥取県東部消防局が管轄する鳥取市は、艤装を担当した吉谷機械製作所の地元でもある。現場経験から出た多くの教訓を、老舗メーカーがまとめあげた。

消防ポンプ自動車CD-I型 鳥取県東部広域行政管理組合消防局
オールシャッター式として、資機材の転落防止・紫外線による劣化防止を図った。
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グリル内にデイライトを取りつけたほか、フロントバンパー側部にウィレン製赤色点滅灯「WIONSMBR24」を縦型に設置。側方からやってくる車両への注意喚起力をアップ。
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ホースカー、スタンドパイプ、消火栓キーはシャッター外に配置。折りたたみ式タイヤは展開し忘れて積載資器材を損傷してしまうおそれもあることから、あえての非折りたたみ式。ルーフ上にアクセスする昇降はしごは後面のみ。
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タンクは重量の関係上、中央部に配置。側面に扉付きの無線類収納庫、アナログ式水量計を設置している。
消防ポンプ自動車CD-I型 鳥取県東部広域行政管理組合消防局
従前車両はLED式照明装置を両側面に取りつけていたが、同車では三連はしごを左側に積載したので右側と後側に設置。
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ルーフ上にはルーフデッキを設置。
制限のあるなかで 本当に必要なものだけ選ぶ

平成30年2月8日、湖山消防署に配備される消防ポンプ自動車CD-I型が更新された。念願だった800L水槽を積載したほか、消火活動や救助活動で必要になる三連はしごとはしご昇降装置を導入した。また、現着後すぐに活動できるようハイルーフを採用し、キャブ内を広くした。さらに同本部では初めて双方向引き出し式吸管を採用。車両部署位置の選定も簡単になった。

あらかじめ艤装を作り込みすぎると、現場での自由度が下がってしまうというジレンマもある。「仕様作成者の独りよがりにならないよう気をつけた」という。だから資機材庫はあえて作り込まず、無段階で高さを調整できる可動式棚とし、現場隊員らの使い勝手に合わせられるよう配慮した。

そんな中こだわったのは、リヤの「半シャッター式」というべき構造だ。他の資機材庫と同じくリヤもシャッター式なのだが、開口部を奥まらせ、一番に必要となるホースカーとスタンドパイプ、消火栓キーはシャッター外に設置した。さらに、ホースカーは設定にワンステップ必要な自動昇降装置や加納式は選ばず、単純かつ機動力の高い手引きを選択。本当に自分たちに必要だと思うものだけを慎重に選んでいった。

一方で課題となったのが総重量の増加だ。ベースシャーシを4000㏄ある日野デュトロに変更。予算の都合上、ボディ素材等の大きな軽量化はかなわなかったが、ハイルーフはFRP製とし、林野火災用の小型動力ポンプをB級からC級に変更することで軽量化していった。

右側面
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無線機類はタンク横に収納し、車両全体に一体感をもたらしている。右側資機材庫には、クラスA消火薬剤およびラインプロポーショナーを積載。
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暗所でも活動しやすいよう、LEDライトをポンプ操作盤に取り付けた。吉谷機械製作所製「GVタッチモニター」を装備し、手袋をつけたままでも操作しやすい。
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配管まわりはパネルを開けて、わかりやすいようにしている。上部は左右通しの資機材庫としている。
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車体の輪郭を示す反射材を貼付。
デザインに違和感がないよう色は赤。
消防ポンプ自動車CD-I型 鳥取県東部広域行政管理組合消防局
用水路等の自然水利が多いため、岩崎製作所製低水位ストレーナー「流線型」を今回初導入。水圧に強く、水位5cmでも吸水できる。

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若手機関員にも親しみやすい車両に

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