化学消防ポンプ自動車Ⅱ型
渋川広域消防本部
渋川広域消防本部 渋川広域消防署(群馬県)
写真◎岸弘幸(渋川広域消防本部)
日本の消防車2019年掲載記事
強力無比なA-1級ポンプを初めて装備
ホース延長に主眼を置いた車両が登場!
コンセプトは「ホース延長」
渋川広域消防本部は、群馬県のほぼ中央に位置する渋川市、吉岡町、榛東村の1市1町1村を管轄し、面積288.86平方キロメートル、人口11万6000人余を1本部1署4分署、職員数158名(取材当時)の体制で日夜、住民の安心安全の確保に努めている。また広域管内には化学工場等4つの大きな工場が点在し、主要道路としては南北に走る関越自動車道と国道17号線(三国街道)、東西に走る国道353号線がある交通の要衝である。
渋川広域消防本部では建物火災に出動する際、初動では救助工作車を出動させず、救助隊員が化学車に乗り換えて出動することを基本としている。これは火災現場に救助工作車を出動させた過去のデータを精査した結果、ほぼ100%といっていいほど、救助工作車を使用しなければならなかった実績がなかったことによるもの。
2018年(平成30年)3月19日、渋川広域消防署本署に配備された新たな化学車は、以上の運用方針に基づいて開発された。さらに開発コンセプトとして指向されたのが、建物火災への対応でもっとも重視される、「ホース延長に主眼を置いた車両」である点である。
効率化を高めるA-1級ポンプ
消火活動はもちろん、人命救助もスムーズに行うためのホース延長。これをもっとも効果的に行える車両をつくるための仕様検討は、警防課を中心に約2年かけて行われた。
カギとなる積載庫の設定は、可能な限り早期に筒先配備4口分を確保するためのホース積載を重視した構造となった。すなわちホースを3本収納した渋消式ホースバッグをゆったりと積載でき、またストップバルブの取り付けてあるガンタイプノズルが収納できるだけのスペースが設けられたものだ。またキャスター付きホースレイヤーも、従来は横にした状態でないと積載できなかったものを、立たせた状態のまま積載できるように改めたため、使い勝手がよくなったと同時に、より多くの収納スペースが確保できている。
渋川消防の戦術はなんといっても、「少ない人員、少ない車両や資機材、そして少ない水で、効率を最大限高めた消火活動を行うこと」である。
そのため1台の車両から分水器を使用し、4口以上のガンタイプノズルによるハイプレッシャー放水を同時に実施する戦術を常用してきたが、これには常にポンプを、ほぼフルスロットルの状態で連続して運用する必要があった。
そこで今回の更新では、ポンプの負担軽減と放水時の瞬発力向上を期して、更新前のA-2級ポンプに対し、A-1級ポンプにグレードアップを施している。警防課では今後、この強力無比なポンプの能力を実戦で検証し、新たな戦術展開につなげたいとしている。
右資機材庫
資機材庫
渋消式ホースバッグをゆったり積載し
4口以上のハイプレッシャー放水を即展開
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左資機材庫・ルーフ