全地形対応車[総務省消防庁貸与車両]岡崎市消防本部
岡崎市消防本部 中消防署[愛知県]
写真・文 ◎ 伊藤久巳
「日本の消防車2014」掲載記事
水深1.2mの水中走行も! 瓦礫、水没地でもガンガン進入する 2台連結クローラ車上陸
ゴム製クローラ方式で人員・物資搬送、救出活動を展開
総務省消防庁は震災対応型の車両として全地形対応車両を整備し、専用搬送車と併せて平成25年3月、愛知県の岡崎市消防本部に無償配備した。
総務省消防庁では広域、大規模災害などの発生に備え、緊急消防援助隊の活動体制の充実強化を図ることを目的とし、全国の消防本部に消防組織法第50条「国有財産等の無償使用」に基づき、必要に応じて消防車両、航空機などを配備しており、全地形対応車両もその一環として行われた。車両の形状は2両連結車体で、2両ともに動力伝達装置はゴム製クローラという変わり種だ。あらゆる災害現場へ人員、物資の搬送、救出救援活動を行う観点から、荒地、不整地、段差、溝、土砂、がれき、大きな水たまり、ぬかるみなど、一般車両では走行不能な悪路でも、特別な装備品などを装着することなく走行可能だ。
東日本大震災の教訓から悪路に対応
ベースとなったのはシンガポール・テクノロジーズ・エンジニアリング社の陸上戦兵器開発部門であるSTキネティックスが製造する災害対応車両「レッドサラマンダー」。事はモリタが一昨年の危機管理産業展2011に同車を出展したのが発端となった。モリタでは、道路が瓦礫にふさがれて車両がまったく前に進めなかった東日本大震災の教訓から、啓開することなく乗り越えて人命救助に向かえる車両の研究、開発に即座に着手した。そのベース車両として選んだのがレッドサラマンダーだったのだ。
車体は前部ユニットと後部ユニットの2個1台運用で、前部ユニットの後部にあるエンジンルームにディーゼルエンジンを搭載。そのすべての出力で油圧ポンプを回して油圧に変換し、前後のユニットに搭載した油圧モーターを回して動力とする。動力は最前部の動軸からクローラに伝えられる。
前後ユニットそれぞれには操舵能力はなく、前後ユニットを連結装置の左右にシリンダーを設け、それを左右別個に伸縮させることによって前後ユニットを変位させ、車両を操舵する。この連結装置には縦方向の動作を制御するシリンダーもあり、これによって前後ユニットがお互いに相手を保持する動作を行い、溝や地割れなどを走破する。
モリタでは完成したレッドサラマンダーを総務省消防庁に提案。同庁では、これを全地形対応車両と名付け、近い将来南海トラフ巨大地震が想定される地域で、なおかつ大震災では液状化現象が予想される愛知県の岡崎市消防本部に配備した。
岡崎市消防本部では全地形対応車両を専用搬送車とともに中消防署に配置。同署の特別救助隊が運用し、大規模災害発生時には緊急消防援助隊として広域出動することになる。
前車両
CLOSE UP! クローラ機構
非常時は天井から脱出!
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後部ユニット