化学消防ポンプ自動車Ⅱ型 岡崎市消防本部

日本の消防車両

化学消防ポンプ自動車Ⅱ型 岡崎市消防本部

岡崎市消防本部 西消防署本署[愛知県]

写真◎中井俊治 文◎井谷麻矢可
「日本の消防車2018」掲載記事

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化学車+タンク車 隊員にやさしいマルチユース最新化学車

化学車の予備車だが住宅地でタンク車的に使う

平成29年2月、岡崎市消防本部は西消防署本署に化学消防ポンプ自動車Ⅱ型を更新配備した。

仕様を検討するにあたり仕様書作成担当者たちがまず考えたのが、化学車ながらタンク車としても運用できる車両にすることだった。西消防署本署の管内には東レや三菱自動車の工場などがあり、B火災が発生する可能性はあるものの、発生件数的には一般火災(A火災)のほうが圧倒的に多い。

そのため新車両は普段はタンク車として運用し、いざ油脂火災が発生すれば化学車として運用できる車両にすること。1台でできることを増やすことが西消防署本署職員の希望でもあった。

もう一つのコンセプトは、コンパクトな車両にすることだった。

西消防署本署管内はもともと田園地帯が多く、田んぼのところどころが宅地開発されてきたため、主要道路は広いが、住宅地へ至るまでの道が狭隘であることが多い。

そこで、新車両は化学車・タンク車2つの機能を兼ね備えながらも、極力コンパクトな車両にする必要があった。担当者たちはメーカーと協議を重ね、知恵を絞りながら検討を重ねた。

いすゞフォワードをベースに製作。AT仕様であり、MTに慣れていない若手機関員でも運用しやすい。
いすゞフォワードをベースに製作。AT仕様であり、MTに慣れていない若手機関員でも運用しやすい。
液晶パネルの操作性UP

同車の最大の特徴と言えるのが、クラスB消火薬液用のポンププロポーショナーに加えてクラスA消火薬液混合装置を搭載している点だ。クラスA混合装置については外部吸引式で、左側面に設けられた吸引口から薬液を吸引して混合装置へと圧送する。クラスA、クラスBの切り替えは液晶パネルのボタンひとつで行う。左右4放口の放水量・放水残時間も一目で確認できるので、操作は非常にわかりやすい。

また、化学車ながらホースカーを搭載しているのもタンク車的運用を考慮してのことだ。車上には、化学車の象徴である放水銃(ヨネ製クロスファイヤー銃)を搭載。手動で45㎝まで上昇するほか、専用のアタッチメントを取り付けることで泡放射も可能だ。また、アオリ部分やタイヤハウス内にフックを取り付け、救助活動時の支点としても活用できる。

起動時の液晶操作パネル
起動時の液晶操作パネル。パネル両側面のボタン(A、B)を押すだけで、A薬剤混合時・B薬剤混合時に自動で切り替わる。
A薬剤混合モード時の液晶操作パネル
A薬剤混合モード時の液晶操作パネル。4放口の放水量がビジュアルで一目でわかるようになっている。
一般C車より5㎝以上短い小型化の工夫

同車は化学車・タンク車2つの車両に必要な機能を搭載しているが、車両サイズは全長7050㎜、ホイルベースは3790㎜に収められた。全長7100〜7500㎜クラスが一般的な化学車Ⅱ型において、同車はコンパクトな部類に入るだろう。しかも坂道対策として、デパーチャアングルは最大限大きくとってある。ここまでコンパクト化できたのは、至る所に小型化のための工夫が散りばめられているからだ。

まず、先代水槽車に搭載されていたのは乗車式のホースレイヤーだったが、同車では電動アシスト機能付きの加納式ホースカーに変更した。加納式ホースカーの方が小さいため、車幅・全長の短縮につながった。さらに吸管は双方向サイドプル方式として省スペース化を図った。リア上部には両側面とリアの三方向から取り出せる大型収納ボックスを作り、収納量をアップさせた。また思い切ってポンプ操作室にシャッターを設けず露出式とすることで、本来シャッター収納部であるスペースも収納スペースに回すことができた。これらの工夫により、サイズ的には先代車両よりも小型化しているが、なんと収納量は以前よりもアップしているという。

右側面
右側面
右側面。住宅街での運用を想定し、全長は7050㎜にまで縮めた。
ポンプ操作室は露出式
ポンプ操作室は露出式。本来シャッター収納部にあたる部分に収納ボックスを設け、放水銃の泡アタッチメントやスト籠を収納している。吸水口・中継口・放水口まわりは配管が見える構造とし、メンテナンス性を向上させた。
ドレンも配管に対応する色に色分け。
ドレンも配管に対応する色に色分け。
配管は吸水口・放水口の系統ごとに色分けし、若手職員の車両構造理解にも役立てている。
配管は吸水口・放水口の系統ごとに色分けし、若手職員の車両構造理解にも役立てている。
積載庫前部にはホースバッグを収納
積載庫前部にはホースバッグを収納。タイヤハウス内には救助活動時の支点として活用できるように支点フックが設けられている。
双方向サイドプル式吸管にすることで、省スペース化を図った。
双方向サイドプル式吸管にすることで、省スペース化を図った。
ホースは署ごとに色分けされていて、西署は紫色
ホースは署ごとに色分けされていて、西署は紫色。これまでは金属製の背負子にホースを収納していたが、今後更新に際してホースバッグや結束バンドタイプに順次更新する予定だという。
クラスA泡薬剤用の外部吸液口
クラスA泡薬剤用の外部吸液口。ここからA薬液を補充する。
補充には専用のノズルを使う。
補充には専用のノズルを使う。
三方向貫通式収納庫にはバスケットストレッチャー(分割型)を収納
三方向貫通式収納庫にはバスケットストレッチャー(分割型)を収納。左右どちらからも取り出しやすい。
積載庫後部は上段が3方向貫通式の大型収納庫、中・下段にはホースバッグや消火砂、チルホールなどを収納
積載庫後部は上段が3方向貫通式の大型収納庫、中・下段にはホースバッグや消火砂、チルホールなどを収納している。大型収納庫は飛び出し防止のため縞鈑で扉をつけた。

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