化学消防ポンプ自動車(CD-Ⅰ型)岡山市消防局

日本の消防車両

化学消防ポンプ自動車(CD-Ⅰ型)岡山市消防局

岡山市消防局 南消防署[岡山県]

写真◎中井俊治 文◎井谷麻矢可
「日本の消防車2018」掲載記事

Twitter Facebook LINE

小型で A・B火災に対応する新しい化学車のカタチ

CD-I型の化学車?

化学車は工場火災などに対応するためになくてはならない車両だが、危険物火災の頻度は一般火災ほど多くなく、タンク車兼用タイプで対応するケースも珍しくない。兼用車両で一番多いのが日野レンジャーやいすゞフォワードをベースとするII型だが、岡山市消防局が更新配備したのは、日野デュトロをベースとしたコンパクトな車両だった。CD-I型ポンプ車と同サイズながらA・B火災に対応するという新しいタイプの化学車である。

この車両は、南消防署で泡放射砲車からの更新車両として整備した小型化学車である。泡放射砲車は2tシャーシに4000L/mの放水銃と1000Lの薬液槽を搭載しており、大規模な危険物火災などを想定して工業地帯を抱える南消防署に配備されていた。しかし近年、工場の自衛消防隊の充実や危険物火災件数の減少(年に1〜2件程度)などにより、そこまで威力を持つ車両の必要性が低くなってきていた。

また、運用する中で、いくつか使いにくさを感じる点も生じていた。まず、泡放射砲車は消防ポンプ非搭載車両のため、自車単独での放水ができず、放水の際にはポンプ車などの別車両から中継送水してもらう必要があった。さらに自車で薬液を補充することができないため、薬液送液装置を持つ泡原液搬送車の到着を待たなければ泡消火薬剤を補液できなかった。

車両更新を担当する本部警防課装備係では、そうした現場からの意見を汲み取り検討した結果、更新車両は泡放射砲車とせず、自車両で吸水・放水が可能な化学車とすることに決定した。

新タイプの化学車
日野デュトロシャーシに様々な機能を盛り込んだ、新タイプの化学車。キャブはCFRP製ハイルーフ(Carbon Fire Jacket)。
桃太郎の桃がトレードマーク。
桃太郎の桃がトレードマーク。
フロント
随所に銀メッキを施し、メタル感のある顔に。
随所に銀メッキを施し、メタル感のある顔に。
赤色塗装を採用
岡山市消防局のポンプ車のシャッターは無塗装銀色が多いが、現場で化学車だとわかりやすいよう、赤色塗装を採用した。
右側面
吸管は双方向巻き取りタイプで、もう1本を棒吸管(車上に積載)とすることで省スペース化を図っている。
吸管は双方向巻き取りタイプで、もう1本を棒吸管(車上に積載)とすることで省スペース化を図っている。
専用のピックアップチューブを使って薬液を補充する。
自動補給システム「パワーフィル」の送液口は車両前部に位置する。専用のピックアップチューブを使って薬液を補充する。
後部の積載スペースには巻取り式吸管のほか、放水銃のポータブルベースなどを収納。
後部の積載スペースには巻取り式吸管のほか、放水銃のポータブルベースなどを収納。
放水口まわりはむき出しとし、配管のメンテナンス性を高めた。サビ浮きが確認しやすいグリーンカラーで塗装。
放水口まわりはむき出しとし、配管のメンテナンス性を高めた。サビ浮きが確認しやすいグリーンカラーで塗装。
下部に設置された白い装置が自動混合装置「フォームプロ」。
下部に設置された白い装置が自動混合装置「フォームプロ」。
ポンプ操作室
ポンプ操作室。薬液混合装置の切り替えレバーや、薬液補給システムの操作ボタンや送液口などは、機関員側である右側面にのみ設置。
スタンドパイプ
スタンドパイプは消火用水利を十分に活用するための双口バルブタイプを採用。
スト籠のユニークな収納方法
スト籠のユニークな収納方法。壁に取り付けられたカップリングにカチッとはめ込む。
薬液混合装置「フォームプロ」の操作レバー
薬液混合装置「フォームプロ」の操作レバー。レバーを倒すだけで混合する薬液(A・B)を切り替えられる。

次のページ:
小型車でA・B火災までカバー

Ranking ランキング