
消防ポンプ自動車CD-I型
中間市消防本部
中間市消防本部 中間市消防署[福岡県]
写真・文◎伊藤久巳
日本の消防車2021掲載記事
戦術のバリエーションを増やす「ALPAS」1300L&フォームプロ!
水槽付ポンプ車からのダウンサイジング
福岡県中間市消防本部では令和元年12月、中間市消防署に消防ポンプ自動車CD-I型を配備した。日野・デュトロ3t級シャーシをベースに、長野ポンプが艤装を担当した。長野ポンプ製ポンプ車が九州に配備されるのは珍しく、前年度の長崎市消防局に続く導入例となった。
1本部1消防署体制を敷く中間市消防本部では、消火用車両として中間市消防署にCD-I型消防ポンプ自動車を2台、水槽付消防ポンプ自動車(水Ⅱ型/2000L水槽)、化学車(化Ⅱ型/1300L水槽)各1台を配備。普通火災の場合、水槽付消防ポンプ自動車(ホースカーなし)、消防ポンプ自動車(水槽なし)各1台が出動し、水槽付が先行して火点直近部署してきた。だが、水Ⅱ型は車体が大きく、管内に点在する狭隘路では火点直近部署できず、CD-I型が先行しなければならないケースが発生していた。その場合、直近に水利があれば取り、ない場合はCD-I型から水Ⅱ型に逆延長しての消火活動になり、初動の放水開始時間がわずかに遅れをとることも考えられた。
そこで、中間市消防署では今後、配備する2台のCD-I型をタンク車レベルの水槽(1000L以上)搭載型にしていき、新たな戦術としてこのCD-I型を先行させて火点部署させることにした。
先行車として1300Lの水が必要
ベースは3t級小型トラックシャーシとなるので、搭載できる水槽の容量が問題となる。部署後すぐに1線2口で消火活動を開始するためには1分当たり480Lの水が必要だ。水利は充実している管内ではあっても、水利中継までは余裕を持って2分30秒かかる。それまでの間に1200Lを使うこととなり、これにホース充水のための捨て水100Lを足すと1300Lが必要という計算になるが、小型シャーシに載せるのは至難の業となる。そこで候補に挙がったのが、長野ポンプ製オールアルミニウム製フレーム「ALPAS」だった。オールアルミ製フレームによる大幅な軽量化により、1300L水槽のための重量を捻出でき、さらに水槽そのものもGFRP製タンクの採用によりステンレス製タンクの半分以下という軽量化が実現できる。
アルミフレームによる車体の軽量化により、後面には電動アシスト付ホースカーまで積載可能となった。近年は、厳しい財政事情から車両の更新が思うように進まないという問題を抱えているが、これを少しでも解決するという理由からも、水利部署車としても使用できるようホースカーを積載した。ホースカーと水槽を持つことにより、同車両の汎用性が格段に上がった。火点直近部署、水利部署のどちらの任務も務められるほか、状況によっては水Ⅱ型や化学車に水利中継することも可能になった。ちなみに、少人数での活動を考えて電動アシスト付きが採用されたが、これを手動式にした場合は水槽の容量は1500Lでもいけたという。
緊援隊登録車として
また、緊急消防援助隊登録車両となることからハイルーフ化による長距離移動時の隊員の負担軽減や照明等のLED化により消費電力の低減も図った。車体デザインは、過去の緊急消防援助隊出動時に同じようなデザインの車両が多く見分けがつきにくかった経験から、シャッター等に再帰性の高い反射シールを多用し、他本部の車両との差別化により一目でわかるようにした。
戦術の変化に合わせて泡混合とノズルを整備
さらに同本部初となる自動泡混合システム「フォームプロ」を導入。従来の外部からの大量放水から内部進入しての火点への直接放水へ火災防ぎょ戦術が変化してきていることに伴い、フォグネイルやGフォース・セレクタブルトリガーを導入した。
この他、活動の長時間化による隊員のヒートストレス対策の一環として、車両に保冷庫を常設。夜間での活動を考慮し佐藤工業所のフラッシュボーイLEDも2基設置した。近年の火災戦術に対応できる、最新鋭の装備を備えた車両の活躍に期待がかかる。
右側面
次のページ:
リア・左側面 他