救助工作車Ⅱ型 京都市消防局

日本の消防車両

救助工作車Ⅱ型 京都市消防局

京都市消防局 伏見消防署山ノ下消防出張所[京都府]

写真◎京都市消防局
日本の消防車2019掲載記事

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現着後、即座に援護注水を開始!
車両後部にA-2級消防ポンプN35

ホイルベース短縮化のためモデルチェンジ前のシャーシ

京都市消防局の管内は、東、北、西の三方を山に囲まれた盆地に市街地が形成され、国内外を問わず多くの観光客が訪れるのが特徴だ。また古くからの木造住宅が数多く残っており、狭隘な道路が多い地域でもある。さらに周辺地に行くと、急勾配な坂道が待ち構える。そんな管内事情を考慮し、京都市消防局配下の特別救助隊は従来、車両後部にB-3級の小型動力ポンプを搭載した救助工作車を運用している。各救助隊が配置されている出張所の直近で火災が発生した場合にホースバッグを活用してホースラインを延長し、消防隊が到着するまでの間にも消火活動を開始するためだ。

平坦な市街地であれば小型動力ポンプとホースバッグで問題なく活動できるが、今回配置予定の消防署管内は急勾配の坂道などがあり、場所によっては長距離のホース延長をしなくてはならないこともある。それらを考慮し、新車両のコンセプトが決まった。資機材の積載容量は従来車両と同等としつつ、かつ大幅にポンプ性能を向上させたA-2級のポンプ、そしてホースカーを積載した車両である。

ベース車両は日野レンジャーだが、あえてフルモデルチェンジされた新型ではなく前期モデルを選定。京都市消防局で運用している救助工作車は、京都市に特有の狭隘な路地に対応するため、通常3700〜3800mmあるホイルベースを3280mmに短縮化して回転性能を向上させているが、新型シャーシでは尿素等の排ガス浄化装置が搭載された関係で、短縮が不可能という情報を事前につかんでいたためだ。

救助工作車Ⅱ型 京都市消防局
回転性能を上げるためにシャーシは短縮化し、最小回転半径5.1mを実現している。
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ベース車両はモデルチェンジ前の日野レンジャー。
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ホースカーの奥に新型消防ポンプN35が位置している。
救助工作車Ⅱ型 京都市消防局
京都市消防局では、車両をコンパクトにするため救助工作車Ⅱ型に移動クレーン(ユニック)は搭載しない。ユニックが必要な場合は特別高度救助隊か高度救助隊に配備している救助工作車Ⅲ型で対応する。
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シャッター部分には京都市消防局の名前が欧文のオリジナルデザインで入る。これは日本を代表する観光地である京都にあって、海外からの観光客に京都市消防局の消防車であることを知らせる目的だ(国によって消防車の色が異なることがある)。消防車については平成28年度から始めた試み(救急車はすでに以前から実施済み)。
救助工作車Ⅱ型 京都市消防局
天板はフラットな部分をできるだけ広めにとってあり、活動スペースとして利用できる。たとえば三連はしごは通常3階部分までしか届かないが、高さ約2mの車両の上で延ばすことで、もう1階部分届かせることができる(三連はしごは8.7mなので約11mまで届く)。また車両のアンカーと組み合わせることで、アリゾナボーテックスを天板上に設置して救助活動が展開できる。対空表示は実用的ではなかったことから現在の京都市消防局の車両には付けていない。
一体型のポンプから操作盤のみ手前に移設

京都市消防局施設課では、平成28年夏から約1年かけて更新車両の仕様を検討した。その際、5名の隊員が活動する際により効率的に活動できるよう、資機材等が取り出しやすく、そして使いやすい車両が求められた。そのひとつの現れが、コンパクトなポンプ装置の選定だ。

当初、検討した国産のポンプはどれも、ポンプ本体、配管、操作盤という配置のため、構造上デッドスペースとなるクリアランスが大きくなりがちだった。また一般的なポンプはシャフトの位置関係により車両の中心にしか配置できないが、そうすると貴重な積載スペースをポンプに取られてしまう。それらの課題を解決するべく選んだのが、オーストリアのメーカーであるローゼンバウアーのN35という新型ポンプだ。

N35は小型な上にポンプ、配管、操作盤が一体型になっており、車両後方の非常に狭いスペースにもコンパクトに置くことができる。車両後方に置くことのメリットは、車両中心部に集中的に積載スペースを確保できることに加え、消火栓が右にあっても左にあっても水利部署できるので、車両を端に寄せることで後着の消防隊のホース延長の邪魔にならないという点だ。ポンプに合わせて放水関係の資機材は車両後部に配置した。

一方、N35はそのまま搭載するのではなく、一点改良を加えてもらった。車両後部には一番手前にホースカーが置かれ、ポンプはその奥に配置している。N35の標準仕様ではポンプに直接操作盤が付いているので、その位置は当然だいぶ奥まっている。しかし消火活動の現場では、水を送ってほしいという信号を目視で送ってくることもあるので、機関員が車両の中に潜り込んでいてはそれが見えない。そこで艤装メーカーに外からでもポンプ操作したいという要望を伝えたところ、試行錯誤の結果、配線を延長することで操作盤部分だけをできるだけ手前に移設してもらい、隊員が現場を確認しながら操作できるようになったのだ。

左側面
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前が重量物破壊器具、後ろがロープ関係の資機材を積載(放水器具関係は車両後部)。またホースバッグは横に2個積んでいる。ホースカーを使うか、ホースバッグを使うかは、現場で臨機応変に判断する。
サーチライト
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取り外し可能な投光器兼検索ライト兼作業用サーチライト、フラッシュボーイソブライトLEDミックスを2基装備。約750℃まで耐えられる耐熱性の延長コード付き。
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検索ライトや投光器といった救助活動にすぐ必要な機材は、積載収納庫に2基搭載するのが通常の形態。投光器は車体後部に別途、常設している。
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車両天板の右前部に作業灯として取り付けた状態。

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救助種別ごとの収納配置

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