資機材搬送車<br>知多市消防本部

日本の消防車両

資機材搬送車
知多市消防本部

知多市消防本部 本署[愛知県]

写真・文◎伊藤久巳
Jレスキュー2018年11月号掲載記事

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3つの用途に対応!変身する資機材搬送車

多用途に使われる搬送車

知多市消防本部では2018年(平成30年)2月、消防署に配備する資機材搬送車を更新し、運用を開始した。

管内は西側一帯が伊勢湾に面し、沿岸部には海水浴場があることから、毎年約10件前後の水難救助事案がある。このため本部全体で21名の隊員が潜水士資格を有しており、該当事案の際にはすぐに潜水隊を編成して救助ボートを車両に積載して出動する。

また石油コンビナート等特別防災区域にも指定されており、大型化学高所放水車、泡原液搬送車の2点セットが消防署に配備されている。これにより、泡原液搬送車に補充する予備の泡原液1キロリットル缶×8個のほか、移動式空気ボンベ充填機、200V発動発電機などの各種資機材を現場へと搬送する必要がある。

知多市消防本部ではこれらの2用途対応の積載車を平成11年度に導入。しかし導入当初に救助ボートを積載する予定はなく、荷台幅が狭かったため救助ボートのエアーを一部抜かなければ積載することができなかった。そのため現場でエアーの充填が必要になり、迅速な活動開始に支障をきたしていた。

さらに緊急援助隊登録車両であることから、愛知県大隊としての出場時には後方支援車両としてエアーテントなどの支援資機材を搬送することになるが、ナビを整備していない点も課題となっていた。

これらの事情をふまえた新車両のコンセプトは「水難事案、緊急消防援助隊後方支援出動、資機材搬送車の3用途対応として先代車両の課題を解決し、迅速かつ安全に活動できる仕様」であった。平成28年度の約1年間かけて消防本部庶務課員、消防署潜水隊員、救助隊員が中心となって新車両の仕様が検討された。

資機材搬送車 知多市消防本部
知多市消防本部消防署に配備された新しい搬送車(知72)。いすゞ「フォワード」4t級4WDワイドボディシャーシをベースに、コーワテックが艤装を担当した。緊援隊にも対応できるよう、4WD、ATが採用された。
「取り外せる」積載庫

前車両で最大の課題となっていた、設定済みの救助ボートを積載できなかった点については、ノーマルボディよりも車体幅が約20cm広い2480mm幅のワイドボディとすることで解決。このほかの資機材収納でも、あらかじめ積載する資機材の寸法を測り、多くの資機材を効率よく積載できるよう設計していった。

荷台上部には取り外しできる収納ラックを左右に4つずつ積載。収納ラックは車両外側に向かって開口部を設置しているので、荷台アオリを開放することでラックは全開放となり、積載物をすぐに取り出せる構造になっている。

水難救助事案では、左右収納ラックの間をアルミ天板で渡し、この上に救助ボートを積載することになる。収納ラックのなかには水難救助用の装備のほか、新たに運用隊員から要望のあったレスキューチューブなどの資機材を収納。同じく新たに要望されたやや長尺のバスケット担架などは、左右の収納ラックの間に収納された。

水難救助事案以外での出動時には、救助ボートと収納ラックを降ろし、フラットな荷台として大容量の搬送車となる。さらにエアーテントなどの大型資機材を搬送することになる緊援隊出動時などでは、幌の取り付けも可能だ。骨組みとなるステーを荷台上に組み立て、これに幌を被せることでこの仕様ができ上がる。消防車両として目立たせるため、幌の色は赤色とされた。収納ラックは軽量なので、人力での取り外しが可能だ。

フロント
資機材搬送車 知多市消防本部
車体前面。ワイドボディシャーシのため、4tシャーシとしてはやや幅広のボディ。クレーンはユニック製最新型クレーン(2.9t)と、救助工作車と同様のパワーを有する。
リア
資機材搬送車 知多市消防本部
車体後面。パワーゲートを90度立ち上げると、荷台後部のあおりとなる。後部にバックライトと赤色灯を設置している。
資機材搬送車 知多市消防本部
パワーゲートを降ろした状態。
幅広パワーゲートで資機材昇降を省力化!
資機材搬送車 知多市消防本部
新装備として後部にパワーゲートを導入。台車に積載した資機材類を一度に荷台に載せることができる。
資機材搬送車 知多市消防本部
パワーゲートは手動式で広げ、さらにたくさんの荷物を積載することができる。

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効率的に活動できるクレーンとパワーゲート

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