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「第27回全国消防救助シンポジウム」開催
各本部の取組を次にどう活かすか
総務省消防庁は2024年(令和6年)12月12日、「第27回全国消防救助シンポジウム」を開催した。
複雑多様化する災害に対応するため
総務省消防庁は2024年(令和6年)12月12日、銀座ブロッサム 中央会館(東京都)において「第27回全国消防救助シンポジウム」を開催した。
今回のテーマは「複雑多様化する大規模自然災害における救助能力の向上」。
今年1月に発生した令和6年能登半島地震をはじめ、風水害、雪害、火山災害など近年発生している災害の形態が複雑多様化している。今後、未曽有の災害が発生した場合に、臨機応変かつ確実に対応するために、全国の救助隊員の救助事例や効果的な取り組みを共有し、討論等を通じて知見を広げて大規模災害における救助能力の向上を図ることを目的とした。
開会の挨拶は消防庁の池田達雄長官が務め、続いて全国消防長会の吉田義実会長(東京消防庁消防総監)が祝辞を述べた。
直接的な救助活動・訓練以外の発表も
同シンポジウムでは、全国の消防本部から8種類の事例研究発表があったほか、静岡大学防災総合センターの牛山素行教授による講演「洪水・土砂災害は起こりうることが、起こりうる場所で」と奥能登広域圏事務組合消防本部の有手栄作能登消防署署長補佐による特別報告「令和6年能登半島地震かた奥能登豪雨について」が行われ、最後に発表者による総合討論「複雑多様化する大規模災害における救助能力向上を目指して」が実施された。
今回の事例研究発表は、土砂災害や風水害での実例や、これらの災害における救助活動のための訓練の紹介に加え、大規模自然災害時の指揮シミュレーション訓練や受援をシミュレーションする教育の実施など、直接的な救助活動以外を取り上げた発表があったことが特徴的だった。
同シンポジウムの終盤には、事例研究発表者の8名と特別報告で登壇した有手氏の9名が参加した総合討論会が行われた。
討論は「複雑多様化する大規模災害における救助能力の向上を目指して」をテーマに行われ、大規模災害発生時の受援体制、県内応援派遣や緊急消防援助隊での活動における他機関との連携をどうするべきか、救助活動時の安全管理の考え方など、この日に発表や報告が行われた演題をさらに発展させるための意見交換が行われた。
具体的には、1年で2回の大規模自然災害で緊急消防援助隊の受援を受けた奥能登広域圏事務組合消防本部の有手氏は、2回目に実施した改善事項として、指揮支援隊の受け入れ場所を市役所や町役場ではなく消防署にしたことと同消防本部の指揮隊を各消防署に配置してリエゾンとして活用したことが挙げられた。加えて、消防以外の警察や自衛隊などの他機関と毎日ブリーフィングをして捜索現場の区分けや重機の配置などの調整を綿密に行うようにしたことを挙げた。
他機関との連携においては、土砂災害や大規模火災現場で重機を保有する民間企業と活動した経験を持つ北九州市消防局の宮﨑大介氏からは、熟練の重機オペレーターが現場の状況を見て重機の進入経路や活動見込み時間を把握することで活動時間を効率化できた経験を踏まえ、重機を現場に投入する前にオペレーターに先に現場を見てもらって活動方針決定の判断材料にすることも有効だという意見があった。
救助活動時の安全管理については、松山市消防局が令和6年度から新設した、役職定年を迎えた経験豊富な職員で編成する「セーフティーマネージャー」が二次災害の発生危険が大きい現場などに出動し、火災現場で壁体内に潜在した残火を発見して延焼を食い止めた例やLPガスの冷却を指示して二次災害の危険を排除した例などが紹介された。
また、会場となった銀座ブロッサム中央会館のホール以外の部分では、消防車艤装メーカーや資機材メーカーのブースが設けられ、新製品や一押し製品の紹介、パンフレットの配布などが行われ、盛況さを見せていた。