支援車II型 枚方寝屋川消防組合消防本部 

日本の消防車両

支援車II型 枚方寝屋川消防組合消防本部 

枚方消防署[大阪府]

写真◎井上健志
Jレスキュー2016年1月号掲載記事

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ハイドロサブ搭載でゲリラ豪雨も怖くない!

1台で3役をこなす

1995年(平成7年)に発生した阪神・淡路大震災では、市街地の消火栓等が壊滅的なダメージを受けたため消火用水が得られず、沿岸部から送水するしかなかった。この災害を教訓として、枚方寝屋川消防組合消防本部では管内3署(枚方消防署、枚方東消防署、寝屋川消防署)に大量送水システム「フロートジェットポンプ」を配備していた。しかし導入から19年が経過し、経年劣化が目立ってきたことに加え、メーカーでの生産も中止され部品の交換もままならないため、現行のシステムに代わる新たなシステムを模索していた。

そんな折、枚方消防署で運用していた特殊災害対応用の車両が更新時期を迎えた。そこでこのタイミングを利用して仕様の見直しを図り、1台で特殊災害対応と大量送排水機能、さらに緊急消防援助隊として出動する際の後方支援にも活用できる、コンテナ積み替え型の支援車Ⅱ型の製作を決定した。ちなみに送水を主目的とする車両として代表的なものに遠距離送水車とホース延長車の2台1セットで運用する海水利用型消防水利システムがあるが、これを運用するには多大な予算・人員が必要になる。同本部管内にはコンビナート等の危険物取扱施設もないことから、そこまで大規模なシステムを導入する必要はないという結論に至った。

導入は決定したものの、同本部ではこれまでコンテナ積み替え型車両の製作経験がなく、どんな仕様にすれば現場隊員が使いやすいのか見当がつかなかった。そのためまずはコンテナ積み替え型の車両をすでに運用していた明石市消防本部を視察し、実際の動作状況を確認。これを仕様書に反映させたほか、検査のたびに栃木県鹿沼市(当時)にある工場まで行き、メーカー担当者と徹底的に協議を重ねた。

コンテナ着脱機構で特にこだわったのが、コンテナをスムーズに接地させるためのプーリーだ。コンテナを着脱する際はシャーシに搭載された油圧式のアームを使い、リモコンでフックのロール動作と上下のアーム動作の微調整を行うが、標準仕様よりプーリーの径を大きくしているので軌道補正が行いやすく、横ズレを防止できる。製作担当者たちの地道な努力の積み重ねにより完成した車両は、消防本部・製造業者ともに納得できる一台となった。

支援車II型 枚方寝屋川消防組合消防本部 
3つのコンテナを載せ替えて運用する支援車Ⅱ型。写真では大量送排水コンテナを搭載しているが、通常時は特殊災害用コンテナを搭載する。
災害種別に応じて載せ替え

同車は大量送排水用、特殊災害用、支援用の3つのコンテナを積み替えて運用する。

特殊災害用と支援用コンテナは、造りは同じだが積載する資機材が異なる。特殊災害用には陽圧式化学防護服や化学剤検知器、ストレッチャー型の指揮机などを収納。先代車両に積載していた資機材すべては載せ替えられなかったため、絶対に必要なものを厳選して積載した。支援用コンテナは、平時はカーゴ台車のみを積載し、資機材は災害種別に合わせて必要なものを積載する方式とした。リアの観音扉のほかに前方両側面にもシャッター式の収納庫を設け、細かい資機材等はこちらへも収納できるようにした。

リア
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シャーシリア部分にはバックアイカメラを搭載。バックアイカメラの映像はキャブ内のモニターで確認できる。
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リアでもアーム着脱操作ができるように、予備コードとリモコン接続口を設けた。
キャブ
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3名乗車できるキャブ内にはAVM装置とバックアイカメラの映像用モニターを搭載している。
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キャブ背面にはのぞき窓を設け、キャブ内からも着脱するアームの様子が確認できる。
着脱機構
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コンテナの着脱用アームにはヒアブ製のマルチリフト(XR6J)を採用した。
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着脱はリモコンのボタン操作で行う。事故を防ぐため、動作の速度を落としたスロースピードモードも備える。
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各コンテナは底面にガイドレールを備えており、プーリーをレールに沿わせることでコンテナを下ろす。下ろす際に軌道が安定するようにプーリーの径を大きくした。

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ハイドロサブHS60を採用

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