田上直人
さいたま市浦和消防署 救急隊(救急救命士) 消防士長
Interview
都市部を走るベテランに学ぶ機関員の心得04〈救急隊の場合〉
【さいたま市消防局】
写真・文◎小貝哲夫
Jレスキュー2018年3月号掲載記事
振動を防ぐため、道路は凸凹の位置まで把握しておく
救急隊の出動では3名が車両に乗り込むと、後方に乗車した隊員が指令書と併せて患者室のモニターに表示される指令番地を読み上げ、3名で大まかな活動方針を決定するミーティングを実施する。走行経路は機関員がナビゲーションを使いながら助手席の隊長と決定するが、現場までは可能な限り広い道を走行するのがセオリー。
傷病者の搬送中は、傷病者に配慮して振動を与えない運転を心がける。悪路は迂回し、道路の状態に合わせて速度を緩めることもある。振動を防ぐためにマンホールなどの凹凸はなるべく避けて走行する。
機関員は普段からよく利用する幹線道路の凹凸を把握し、徐行するなどして極力振動を防止する。同様に道路工事の場所も把握しておき回避する。
気づかれにくく、すり抜けが多い渋滞では、とくに注意が必要
出場回数が多い救急車は安全管理を徹底しなければならない。歩行者や自転車が多い駅前の繁華街などは、すれ違う際に接触してしまう恐れがある。とくに夜間の酩酊者、イヤホンをつけて自転車に乗っている人、歩きスマホをしている人の近くを走行するときは危険性が高いため、注意が必要だ。
また、渋滞している道路では前を走行している一般車両が救急車の接近に気づきにくく、急に車線変更してくることもある。すり抜けするバイクや自転車も多いので、サイドミラーでの安全確認は必須だ。
アクセルもブレーキもゆっくり。患者に配慮したブレーキ操作
救急車の場合は振動が傷病者の容体悪化を招くリスクがあるため、急制動による振動に気を配る必要がある。
発進時はアクセルをゆっくり踏みはじめることで急発進による振動をなくし、交差点を曲がる際は遠心力の発生を防ぐためほぼ曲がりを終えてからアクセルを踏む。ブレーキは停止するだいぶ前からゆっくり踏む。急停車は厳禁だが、急停車を余儀なくする場合は後方の隊員や傷病者にその旨を伝え備えてもらう。車両にも個性があり、ブレーキのかけ具合も変えることがある。
アナウンスは聞き取りやすい言葉選びを
走行中のアナウンスは周囲が聞きとりやすいよう、明瞭にわかる言葉を使う。たとえば「右折」「左折」は聞き取りにくいので、「右に曲がります」「左に曲がります」といった聞き取りやすさを大切にする。交通量の多い交差点では、”ピーポーサイレン”と“ウーサイレン”を併用するなどして、早く気が付いてもらうよう心がける。
田上直人さいたま市浦和消防署 救急隊(救急救命士) 消防士長
主に救急車に乗務。
機関員歴17年。