ベテラン隊長に見る未来のリーダー養成術

宮本英樹 大阪市消防局警防部司令課 消防司令

大阪市消防局警防部司令課 消防司令 本部特別高度救助隊 隊長

Interview

ベテラン隊長に見る未来のリーダー養成術

大阪市消防局に各救助隊を統括する本部特別高度救助隊が発足した。
複数の部隊を動かす隊になった時、その隊長はどこを見据えて指示を出すのか
平時の部隊づくりから、現場活動までレスキュー隊のリーダーの一日を追う。

[写真]大阪レスキューを束ねるトップ2のうちの一人といえる、本部特別高度救助隊の宮本英樹隊長。

写真◎伊藤久巳・木下慎次(特記以外) 
文◎木下慎次
Jレスキュー2014年9月号掲載記事

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「私は自分のアタマで考える隊長をつくりたい」

大阪消防に発足した新隊

まだ初夏だというのに、連日30度を超える真夏日が続く大阪の6月。大阪市消防局高度専門教育訓練センター(旧・市消防学校)では、早朝から国際消防救助隊研修が行われていた。大阪市消防局IRT登録隊員らが2チームに分かれ、高度救助用器具を活用したサーチングと、木材を活用したショアリングを実施している。立っているだけで汗が噴出してくる熱さの中、目前で行われる訓練に鋭い視線を送る一人の男がいた。

本部特別高度救助隊(1部)の隊長を務める消防司令・宮本英樹 。大阪市消防局における救助部隊の最高峰といえる本部特別高度救助隊に属し、自隊はもちろん、市内の各救助部隊を牽引する。

本部特別高度救助隊は平成26年4月1日に新設された、大阪市で29隊目となる人命救助の実働部隊。同市には特別救助隊として、航空救助隊(Air Rescue)のAR、都市災害救助隊(Big Urban Rescue)のBR、化学災害救助隊(Chemical Related Rescue)のCR、そして水難救助隊(Dive Rescue)のDRの4種の専門部隊がある。これまでは災害規模や内容等に応じてこれら部隊が集結し、特殊災害機動部隊を編成することで、特別高度救助隊の機能を果たしていた。また、特殊災害機動部隊を効果的に運用するため、平成20年4月には救助指揮支援隊を発足させ、各救助部隊を指揮・支援する本部直轄のコマンドレスキュー隊として運用していた。この体制の見直しを図り、東日本大震災での教訓や、今後発生が予想される南海トラフ巨大地震等の大規模災害に対応すべく発足したのが本部特別高度救助隊だ。組織としては救助指揮支援隊が進化したもので、任務も従来は指揮支援活動を中心としていたのに対し、救助活動を主体とした隊に変化した。また、大阪市消防局の本部特別高度救助隊に属する隊員はAR、BR、CR、DRそれぞれに求められる専門知識や手技、資格を有することが要件とされている。まさしく救助部隊の最高峰といえる隊なのである。

【サーチング研修】
救助隊
大阪市消防局高度専門教育訓練センターで実施されたIRT登録隊員に対する国際消防救助隊研修。電磁波探査装置や地中音響探知機により生存者を検索するサーチング。まず現場で資機材の設定を行う。
今回の訓練では資機材の使用感や実地でのスペックを把握するというサブテーマも掲げられた。
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救助隊
訓練は3時間のローテーションで2小隊に分かれて実施する。各想定とも、1本目は安全管理要員が張り付き、細部に渡りアドバイスや安全確保を行う。各ポジションに就いた隊員らを宮本隊長がチェックする。
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救助隊
指揮台
戦術の組み立て
作戦卓に現場であるガレ場の状況図と、電磁波探査装置や地中音響探知機のセンサー設置位置を記載していく。わかりやすい記載とそれを活用した戦術の組み立ては、リーダーにとって欠かせないスキルと言える。
矢印
「何らかの反響音を拾っているだけかもしれん。再度確認したほうがええ」
救助隊
高性能なセンサーマイクだけに、要救助者が意図的に発した音ではなく、なんらかの音を拾っている可能性がある。そこで3回叩いてなどと指示し、意図を持った音であるか確認を行う方法をアドバイスする。
矢印
救助隊
再度サイレントタイムを設け、今度は要救助者に「3回叩いて」という指示を加える。その結果、要救助者が意図的に発した音であることが確認できた。
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救助隊
強反応が出たセンサーの位置を作戦卓で確認し、生存者のいる位置を検討する。
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救助隊
訓練の合間に、指導役の本部特別高度救助隊の隊員らにもアドバイスをおくる宮本隊長。訓練におけるリーダーの役割は、実働隊員のスキルアップを図るのみでなく、指導者の育成を図ることである。文字通り広い視野で、訓練として、そして実災害に置き換えて目前の状況を捉え、適切に指導していかねばならない。
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救助隊
実施小隊に対し、指導や安全管理を行う阿倍野BR、本部特別高度救助隊の隊員らがアドバイスをおくる。それを傍らで見守る宮本隊長。こうした場面では若手の発想力を育てるよう心がけ、宮本隊長はあまり口を挟まないようにしている。
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救助隊
安全管理責任者として、視覚情報のみでなく、耳から入る声や音、すべてに対して注意を払う。隊員達の指示や報告は分かりやすいか、動きに無駄はないか、訓練全体を常に見渡し、進展状況をチェックする。訓練の全体を見るリーダーとしては、こうした視点も必要になる。

大阪市消防局の救助体制

近年の社会活動の複雑多様化を反映し、建築物は深層化、高層化し都市構造は複雑化している。大阪市消防局ではこれら困難化する救助事案に対処するため、市内に28隊の救助部隊を編成し、25消防署と3消防出張所に配置し対処してきた。

内訳としては第二条救助隊に相当する救助隊が15隊、第四条救助隊に相当する特別救助隊(愛称・スーパーレスキュー)が13隊となる。そして平成26年より第六条救助隊に相当する特別高度救助隊1隊を新設。計29隊の救助部隊に410名の救助隊員(特別高度救助隊員14名、特別救助隊員195名、救助隊員が201名)が配置され、各種救助事案に対応している。

図
救助部隊の種類
特別救助隊(第四条救助隊)

第五条救助隊を兼ねる存在であり、第四条救助隊に各種指定任務を付加して活動している。指定任務及び詳細は以下の通り。

■航空救助隊(AR) 3隊
(エアー・レスキュー:AR隊)

平成10年4月20日発足。高層建築物等における災害からの人命救助と、それにともなう負傷者の搬送などヘリコプターの特性を生かした活動を行うほか、救出まで長時間を要する機械事故等の救助事案や地震等の大規模災害に対応する特別救助隊。

■都市災害救助隊(BR)4隊
(ビッグ・アーバン・レスキュー:BR隊)

平成8年10月1日発足。放射線施設、電気施設及び地下街・地下鉄などの地下施設で発生した火災や事故の他、地震等の大規模災害に対応する特別救助隊。

■化学災害救助隊(CR)4隊
(ケミカル・リレイテッド・レスキュー:CR隊)

平成9年10月1日発足。危険物、毒劇物、高圧ガス等の火災、爆発及び漏洩などの事故に対応する特別救助隊。

■水難救助隊(DR)2隊(ダイブ・レスキュー:DR隊)
平成17年4月13日発足。潜水救助活動を必要とする水難事故に対応する特別救助隊。

エンブレム
救助隊(第二条救助隊)

省令の区分で言えば第二条救助隊に相当するが、人命救助を担う専任部隊として第四条救助隊と同等の活動を行っている。

エンブレム
特別高度救助隊(第六条救助隊)

大阪市29隊目の救助実働部隊として発足。他の救助部隊が署所に所属しているのに対し、特別高度救助隊は、本部の警防部司令課に属している。同隊は人命の救助に関する専門的かつ高度な教育を受けた隊員で編成され、特殊災害に対する救助活動に従事するとともに、多数の要救助者の発生が予想されるNBC災害やその他大規模災害等においては、救助部門の指揮を執り、極めて困難な局面に対応する。

エンブレム

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