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【コラム】消防車両への電源供給装置について
消防車は出動時に常に万全の状態で稼働できなければならない。そのため車庫で待機している間にも受電コンセントから電源を供給し、エンジンや水槽、電装類を適切な状態に保っている。オイルパンや水槽・配管のヒータをはじめ、バッテリー補充電装置など多彩な機能を支えるこの仕組みは、過酷な条件下でも即応力を発揮する消防車に欠かせない存在だ。
写真・文◎橋本政靖
「Jレスキュー2020年3月号」掲載記事
車庫内待機時にも電源を供給する
消防車両は車庫内待機時には、車両に電極供給用の受電コンセントを接続して電源を供給している。この受電コンセントは車両右側前方や車両後方に設けられており、ここから分岐されて各所に電源を供給している。供給先としてはオイルパンヒータ、水槽・配管ヒータ、バッテリー補充電装置、車内電装類・コンセントなどがある。
まず、オイルパンヒータは主にフルパワーPTOを有している消防車専用シャーシに設けられており、エンジン下部にあるオイルパンに電熱ヒータを取り付けてあり、待機時にオイルパンを加熱しておくことでいわゆる暖機運転に近い状態にして始動時等のエンジン状態を良好な状態に保っている。
同じく水槽・配管ヒータは厳寒時において水槽や配管が凍結するのを防ぐために加熱するものである。これらについては別にスイッチが設けられていることがあり、冬季以外では切断することも可能である。

バッテリー上がり対策のほか車内機器の充電も行う
バッテリー補充電装置は、待機時のバッテリー自体の自己放電や車内各種電装類で使用される電力を補充することで、バッテリー上がりを防ぐ装置である。近年では車両に装備する電装類が増えるにともない、電源使用量が増大して、バッテリーへの負担が大きく、バッテリー上がりが問題視されるようになっているが、その対策の一環でもある。
待機時の電源供給の必要性としては、出場指令や地図更新などを行うためにAVM装置が常時稼働状態となっており、これらのシステムへ供給する必要もある。このほか、車内コンセントはバッテリー系統からDC-ACインバーターを介してキャブ内にあるコンセントにAC100V電力を供給することで、待機時においても携帯電話や携帯無線機等の充電を行う装置である。
このほか、電動式のホースカーなどの充電を行う場合もある。さらに救急車においては殺菌や加温のため、車内に殺菌装置やヒータを設置している場合もある。
なお、出場時にはコンセント類の外し忘れや外したコンセント・ケーブル類の車両へのひっかけ事故等のないように十分に注意していただければと思う。
