
救助工作車II型
川崎市消防局
川崎市消防局 高津消防署[神奈川県]
Jレスキュー2019年5月号掲載記事
写真・文◎伊藤久巳
川崎消防の救助工作車は実用性第一主義!!
シンプルな構造、飾らない外観
川崎市消防局では2019年(平成31年)1月、高津消防署に配備する救助工作車Ⅱ型を更新。日野レンジャー5.5t級シャーシをベースに、帝国繊維が艤装を担当した。
川崎市消防局では特別高度救助隊を2隊、特別救助隊6隊を配備し、そのうち特別救助隊が配置されている高津消防署は、東京都と神奈川県の境を流れる多摩川からわずか1km程度に位置する。
同車は、川崎市消防局管内の特別救助隊が運用する救助工作車Ⅱ型のごく標準的な仕様として、シンプルに製作されていることが特徴だ。また川崎市消防局に配備されている救助工作車として初のハイルーフ装備車両である。この理由は、平成28年度排出ガス規制に対応した日野レンジャーのモデルチェンジにある。
実は、以前にも運用隊員からハイルーフ化の要望はあった。同局では可能な限り運用隊員らの意見を汲んで仕様を作成しているが、ハイルーフ化はどうしても予算面から都合がつかず見送られてきた。しかし今回のモデルチェンジで排出ガス浄化装置が設置され、積載スペースが減少したため、キャブ内スペースを有効活用できるハイルーフへの移行はマストとなった。結果として出動時のPPE装着なども容易になり、出動も迅速化。今後、救助工作車の更新車両ではハイルーフ化が進むと考えられる。
外観はけっして飾らず、資機材収納庫のシャッターなどにはシンプルに文字だけが描かれていることが特徴。後面にクレーン装置を装備、救助工作車であることをきちんと主張する赤い車体には、逆に凄みさえ感じるほどだ。
川崎消防伝統の屈曲式クレーン
シンプルな外観の中で目を引くのは、これまでの川崎市消防局救助工作車の伝統として搭載される、ヒアブ製屈曲式クレーン装置だ。直進式クレーン装置ではなくあえて屈曲式を採用する理由は、ワイヤーを使わずにブーム先端のフックで直接吊る構造のためで、救助活動時、空中に支点をとることを考慮しているからだ。屈曲式クレーンは用水路、河川など高低差のある低所へのアプローチでも、安全に活動できる利点がある。
またブームは資機材庫後部に折りたたんで収納されるため、常に資機材庫上に活動スペースを確保し、活動の選択肢のひとつとして残している。
一方、管内には第三京浜、東名高速道路などが走るため、高速道路上での多重衝突交通事故対応のため、前後面ともロッツラー製トライマチックウインチを装備している。前面の張り出しバンパー上に装着された前面ウインチは、ワイヤーの引き出し長さに関係なく、常時5tの引張能力を発揮。大型トラックなどの重量物を牽引するには、5t引きは必須。また牽引角度は、上下左右のいずれも全方位25度まで対応可能だ。
ロッツラー製油圧ウインチ装置は後面にも装着され、こちらは滑車を組み合わせることで、引張能力は10t引きとなる。
車体は、あらゆる照明に気を遣っている。主照明装置は湘南工作所製のLED式6000W容量。これ以外には、車体後部に伸縮式照明装置を備えるほか、車体側面、後面には随所にLED式照明灯が設けられている。
積載資機材は、運用隊員の希望をできるかぎり取り入れ、一昨年度導入した宮前特別高度救助隊救助工作車に初めて積載されたテンペストブロアーや、オートクリブなど、現場隊員の要望が十分に反映されたラインナップとなっている。
フロント
キャブ
リア
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