東京消防庁9HR 林野火災対応は頭脳戦だ!【中編】

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東京消防庁9HR 林野火災対応は頭脳戦だ!【中編】

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写真・文◎木下慎次(特記を除く)
Jレスキュー2025年3月号掲載記事
(部隊の編成や隊員の役職・階級は取材当時のもの)

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一般的に林野火災は人が山に入る機会が多くなる春先が多いとされており、東京都内の場合で見ると4〜6月に集中して発生している傾向にある。山間部を守備する第九消防方面本部管内で林野火災が発生した場合は管轄消防署が真っ先に活動を展開するが、同時に9HRにも出場指令が下る。

1回間違えると、戻ってのやり直しがきかないというのは災害対応に共通して言えることだが、林野火災の場合はいったん山中に入って活動を始めれば使用できる資器材の変更はきかず、車両に取りに戻ることも容易ではない。また、エラーをリカバリーすれば体力も消耗する。林野火災は「準備8割」と言えるほど、準備段階がその後の活動を大きく左右する。

東京消防庁9HR 林野火災対応
立川市にある多摩災害救急情報センターから部隊長宛に出場打診の電話連絡が入る。これは予告指令に相当するもので、これを受けてハイパーレスキューが動き出す。
東京消防庁9HR 林野火災対応
隊員らは入山口一覧簿冊や林野地図(管内白地図)を取り出し、災害地点情報を元に集結場所や水利を確認する。
東京消防庁9HR 林野火災対応
9HRでは、災害内容によって保有する全17台の車両の中から出場車両を部隊長が選定する。隊員20名で一度に現場投入できる最大車両台数は8台(大型免許を持つ機関員は10名程度。緊急消防援助隊として出場する際は運転交代を考慮しおおむね5台程度)。林野火災の際は5~7台程度を選択して出場する。この車両に対して部隊長を含めた人員を配置する。あわせて、出場車両に増載する資器材の内容と、どの車両に何を積載するかを決める。
東京消防庁9HR 林野火災対応
9HRではあらかじめ災害種別ごとに増強資器材のチェックリスト作成しており、何を何個増載するか、資器材はどこから出すか(平時の保管場所)なども明記してある。
東京消防庁9HR 林野火災対応
実際の林野火災チェック表。写真は出場体制が整い、すべての必要事項にチェックが入れられた状態。これを現場に携行し、他隊とも情報を共有する。
東京消防庁9HR 林野火災対応
機関員が全員で道路地図を確認し、出場経路を検討。車両特性や搭載装置、積載資器材の内容などを踏まえ、出場経路や出場順位を決定する。
東京消防庁9HR 林野火災対応
林野火災では災害地点(炎上している場所)直近の入山口から山に入ることになり、その入山口直近の集結場所に一旦部隊が集結し、直近の水利部署可能位置から水を取る。つまり、集結場所や水利はある程度固定される。そこで、9HRでは事前に道路調査や水利調査を実施し、集結場所、水利をとれる場所、車両が入れる林道などを地図に明記している。
東京消防庁9HR 林野火災対応
緊急消防援助隊登録車両であるスーパーポンパーにはカーナビゲーションシステムが搭載されている。これを活用し、山間部におけるスーパーポンパー水利部署可能位置をあらかじめポイント登録してある。
東京消防庁9HR 林野火災対応
東京消防庁9HR 林野火災対応
林野火災に際しては、平時は車両に積載していないツール、あるいはCS1(特殊災害対応車)などに積載されているツールで林野火災現場に使用するものを出場車両に積み替えて出場する。林野火災チェック表を活用し、迅速に資器材を用意し、車両に積み込みを行う。林野火災の場合は現場状況と活動性を考慮して保安帽と防火衣上衣、防火グローブで活動するが、火勢が強まった際に必要となる防火ズボン、防火靴、防火帽も積載しておく。出場体制が整った車両から赤色警光灯を点灯させて周知を図る。全車体制が整ったら出場する。 
東京消防庁9HR 林野火災対応
事務室にて災害地点や増載資器材の確認が済んだら車庫へ移動する。 
東京消防庁9HR 林野火災対応
可搬ポンプなど一部の林野火災対応資器材は倉庫に収納されている。これらを運び出し、車両へ積載する。 
東京消防庁9HR 林野火災対応
人員輸送車や特殊災害対策車(高踏破偵察車・CS3)は人員や装備の搬送に活躍する。
東京消防庁9HR 林野火災対応
人員輸送車や特殊災害対策車(高踏破偵察車・CS3)は人員や装備の搬送に活躍する。
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写真・文◎木下慎次(特記を除く) Jレスキュー2025年3月号掲載記事 (部隊の編成や隊員の役職・階級は取材当時のもの)

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