
大型化学車
東京消防庁 深川消防署豊洲出張所
東京消防庁 深川消防署豊洲出張所[東京都]
写真・文◎伊藤久巳
Jレスキュー2019年1月号掲載記事
ポンププロポーショナー方式採用でより使いやすい大型化学車
豊洲出張所で大型化学車を更新
東京消防庁では深川消防署豊洲出張所に配置する大型化学車を2018年(平成30年)5月に更新した。モリタが艤装を担当し、日野「プロフィア」22t級シャーシをベースに製作された。
A‐1級ポンプ装置を搭載し、2700リットル水槽、1500リットル薬液槽×2を持ち、車体上部には大型泡放水銃(最大放射量毎分4500リットル)を装備し、規格上は化学車V型相当ということになる。
豊洲出張所には今回更新した大型化学車とともに高所放水塔車(豊洲LP)が配置され、この2隊の連携により、石油コンビナート等特別防災区域に配備されるいわゆる2点セットと同じものを形成している。これは、かつてこの区域が同特別防災区域に指定されていたことによる。大規模危険物施設が移転し、特別防災区域指定を解除された以降も、東京湾岸地域には油脂を扱う事業所が多く所在すること、また東京港トンネルや東京ゲートブリッジを通ることで羽田空港地区(ジェット燃料貯蔵タンク増設に伴い、平成30年度中に特別防災区域に指定)の比較的直近にあたることから、引き続きここ豊洲出張所に大型化学車と高所放水塔車が配置された。
東京消防庁の中では比較的多くの化学車が集中配備されている第七消防方面内で、油脂火災対応の要としてにらみを利かせている。

大型化学車でポンププロポーショナー初採用
新車両最大の特徴は、東京消防庁の大型化学車としてはじめて、泡消火薬剤の混合装置でポンププロポーショナー方式を採用したことだ。
大型化学車は、泡放射量毎分3000リットル以上最大4500リットルもの大容量放射を誇る。このため水ポンプとは別に、消火薬剤用のギアポンプを搭載した圧送比例方式が採用されてきた。対してポンププロポーショナーは、エゼクターによる負圧を利用して消火薬剤と水を混合させるため、ギアポンプなどの装備が不要で軽量化が図れるほか整備性が高く、現場においてもより扱いやすい。しかし、泡放射量が少ないため普通化学車に搭載されていた。
だが、構造が比較的簡単なポンププロポーショナーが大型化学車にも使えるならこれに越したことはない。
今回は同庁からの強い要望により毎分5000リットルの泡放射が可能なポンププロポーショナーが製作され、大型化学車へのポンププロポーショナー方式混合装置の採用が実現した。
フロント

さまざまな火災事案に対応
薬液槽は1500リットル容量を2槽装備する。2槽はそれぞれフッ素タンパク泡消火薬剤(石油類および水溶性液体火災用)を積載している。
東京消防庁では石油類タンク火災やタンクローリー火災等、高火力の火災には耐火性が強く消火効果の高いフッ素タンパク泡消火薬剤が効果的と判断し、使用している。これに対し、空間を泡で満たしてしまうなどの消火戦術で用いられるのが合成界面活性剤泡消火薬剤だ。
発泡器具は車上に大型泡放射銃(毎分泡放射量4500リットル/3000リットル切り替え式)が装備されているほか、500型中発泡器、200型高発泡器、500型低反動ノズルを積載している。
また、ポンププロポーショナー方式が採用されたことから、消火剤少量混合方法は、外部吸液口から吸引することで行う。なお、車上には合成界面活性剤泡消火薬剤を入れたポリタンクが積載されている。
リア


キャブ




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